「金正恩氏は深夜の走り屋」説はどうやら本当だった!

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北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は11日、「深い夜、朝早くから訪ねて来られ」と題した記事を掲載した。3年前のある日、金正恩党委員長が、当時建設が進められていたレジャー施設「紋繍(ムンス)ウォーターパーク」の工事現場を訪ねたときにエピソードを紹介するものだ。

愛車のベンツで

それによると、正恩氏は2013年9月29日の早朝に前触れもなく現場を訪れ、仰天する担当者たちとともに、現場の細部まで見て回った。さらに翌月某日の深夜にも、同様に現場を訪ねて視察を行ったという。

この記事の目的は、核実験に対する国際社会の制裁により北朝鮮経済の苦境が深まる中、正恩氏の「人民愛」を強調し、国民の不満を少しでも和らげることにあるのだろう。

しかし、筆者はこれを読み、まったく違うことが気になった。

もしかしたら正恩氏は深夜に眠れず、自ら愛車をドライブし、工事現場に向かったのではないだろうか。

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正恩氏が愛車のベンツを自分で運転しているとの話は、「金正日の料理人」として知られる藤本健二氏から、テレビ番組で共演した際に、直接聞いたことがある。

そして実は、平壌市民の間では以前から、「元帥様(金正恩氏)が、夜中にこっそり専用ベンツに乗って平壌市内を流している」との噂が囁かれているのだ。

激太りの歴史

正恩氏がどのような趣味を持っていようがさして重要でないと思われるかもしれないが、興味深いのは「ストレス」との関連である。

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韓国の国家情報院(国情院)は今月初め、正恩氏の体重について、「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」と明らかにした。そして激太りの原因として考えられるものとして、「不眠症」から来る暴飲暴食を挙げているのだ。

もともと太目だった正恩氏の体型の変遷を検証すると、2013年8月あたりから本格的に太り始める。そして、2014年からさらに拍車がかかるわけだが、筆者は、この時期に注目する。

ベンツにトイレの「代用品」

2013年8月というのは北朝鮮の芸術関係者に対して「ポルノ疑惑」がもたれ、粛清がはじまったころだ。この粛清の波は、2013年12月の張成沢氏の無慈悲な処刑で嵐となり北朝鮮国内で吹き荒れる。

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金正恩氏が、粛清という刀を振り回し暴走しはじめた時期と、急激に肥満度が高まる時期が一致するのは偶然とは思えない。恐怖政治を激化させる中で猜疑心やストレス、プレッシャーにさいなまれたことが、不眠症や極度の肥満につながった可能性は充分にある。

そもそも正恩氏は、最高指導者ゆえに生活上の不便を強いられることも多い。たとえば、頻繁に現地指導する正恩氏だが、普通のトイレを使用できないために、専用車のベンツに「代用品」を載せて移動しているという。

北朝鮮という複雑な国家体制を率いる金正恩氏のストレスは並大抵ではないだろう。だからこそ、「深夜の走り屋」としてうっぷんを晴らしているのかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記