LINEや国際電話で「収容所送り」…金正恩指令

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北朝鮮で先月、韓国との通話をめぐって取り締まる側の保安員(警察官)まで逮捕される事件が起きた。北朝鮮当局が、いくら取り締まろうと携帯電話を通じた海外とのやり取りは、一向になくならないようだ。

「この世の地獄」政治犯収容所

両江道(リャンガンド)在住のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは協同農場で働く2人と保安員1人の計3人。全員が、朝鮮労働党の党員で、普段から熱心に党活動を行い、金正恩党委員長に対する忠誠心も高かった。

しかし、中国キャリアの携帯電話を使って、脱北して韓国に住む兄弟と通話していたところを、国家安全保衛部の反探処(スパイ取り締まり部署)の要員に踏み込まれ、緊急逮捕された。

「容疑は『社会主義を抹殺しようとするスパイおよび破壊暗害分子』だった。さらに同じ日に、保安員1人も『南朝鮮との通話を頻繁に行っていることを知りながら、ワイロを受け取り見逃していた』容疑で逮捕された」(両江道の内部情報筋)

北朝鮮当局が、この3人に対してどのような処罰を与えるのかは不明だ。銃殺などの極刑を逃れたとしても、「この世の地獄」言われる政治犯収容所、もしくは教化所など、拷問、処刑が常態化している拘禁施設に収容される可能性が高い。

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実際、保衛部は「釈放してもらいたいなら(中国人民元で)3万元(約46万円)を払え」と取引を持ちかけており、逮捕された2人もなんとか収容所送りから逃れようとして、脱北して韓国に住む兄弟にカネの無心をしているとのことだ。

エロビデオにも警戒強める

しかし、仮にワイロを用意して、さらに熱心な労働党員だとしても、「保安員まで緊急逮捕されたので、カネでの解決は難しく、収容所送りになるだろう」と現地の住民は噂しているという。

そもそも、金正恩氏は、繰り返し「韓国、中国との通話を取り締まれ」と海外との通話にナーバスになっている。そのせいか、5月には「違反者は反逆罪で厳罰に処せ」という指示を下し、さらに、中国キャリアの携帯で使用可能なLINEやカカオトークなどのコミュニケーションアプリに対する警戒も強めている。

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なぜなら、こうしたアプリを通じて、金正恩体制にとって都合の悪い様々な情報が北朝鮮に流入するからだ。

また、昨年3月にスパイ容疑で逮捕された2人の韓国人男性は、韓国の国家情報院(国情院)の求めに応じ、「花豚事業」というコードネームのもと、金正恩氏を冒とくする漫画や、エロビデオ、韓流映画を記録したフラッシュメモリーなどを北朝鮮に投入したと告白している。

こうした事情から、北朝鮮当局は、中朝国境地帯における海外通話の摘発に躍起になっている。捜索のために電波探知機を頻繁に使用したせいで、中国では携帯電話の通話に障害が発生しているほどだ。

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もちろん、こうした金正恩氏の「携帯電話取り締まり令」に対する住民の不満は非常に強い。

中朝国境に接している両江道では、多くの住民が合法、非合法問わず中国とのビジネスを行っている。そのため、中国の業者と連絡を取り合うことは日常茶飯事であり、禁止されると商売、すなわち生計を直撃するからだ。

内部情報筋によると、住民らは「他の国ではあたりまえの話をしただけなのに、北朝鮮ではスパイや民族反逆者扱いされる」「電話をかけただけでスパイ扱いされるのなら、この街の住民は全員がスパイだ」 「密輸をしなければ生きていないのに、携帯電話を使えなくしたらどうやって生きていけばいいのか」などと、不満を表している。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記