北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、29日に開かれた最高人民会議第13期第4回会議で、国務委員会委員長に推戴されたと、朝鮮中央テレビが報じた。
朝鮮中央テレビでは、楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)最高人民会議常任委員会副委員長が、国防委員会第1委員長を朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長とし、国防委員会を国務委員会に改編したとする旨の発言を行った模様だ。
これまで、北朝鮮の最高機関だった国防委員会に新設の国務委員会がとって代わり、正恩氏がそのトップである国務委員長に推戴されたということだ。
また、国務委員会の副委員長には、崔龍海(チェ・リョンヘ)、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)、朴奉珠(パク・ポンジュ)の3氏が就任した。
粛清で批判封じ
金正恩氏は就任以来、祖父から続く粛清政治で体制固めをはかってきた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面今年5月6日に36年ぶりの朝鮮労働党大会が開幕したときには、公の場で正恩氏を批判しようなどという空気は、北朝鮮国内のどこにもなくなっていた。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)同時に正恩氏は、党大会での報告で、北朝鮮と朝鮮労働党の歴史を意のままに解釈。異を唱えられなかった幹部らは「踏み絵」をさせられたようなもので、今後はいっそう、正恩氏に服従せざるを得なくなった。
残ったのは、父から受け継いだ権力機関である国防委員会を、「正恩デザイン」の組織に変えることだけだった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面弱冠30代前半で、父から帝王学を学ぶ十分な時間もなかったと見られている正恩氏だが、権力に対する動物的とも言える勘を武器に、わずかな時間で独裁の足場を固めたと言える。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。