中国「報復拉致」を警戒か…北朝鮮との国境警備を強化

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中国の国境警備隊(辺防)が、北朝鮮との国境地帯での検問を大幅に強化していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

RFAによると、最近、中朝国境地帯を観光で訪れた韓国在住の脱北者は、半日の間に8回も警備隊の検問を受け、「観光しているより検問を受けている時間の方が長かった。100メートルごとに検問を行っているエリアもある」と語っている。警備隊は、外国人らを観光バスに閉じ込めて旅券やスマートホンの提示を求め、スマホに北朝鮮側を撮った画像を見つけると、その場で削除を要求するという。

美女奪還を目指す

また、吉林省延辺朝鮮族自治州の図們市に住む中国朝鮮族の消息筋は、「少し前まで、検問はこれほどひどくなかった。北朝鮮レストラン(北レス)の従業員たちが集団脱北し、北朝鮮が、韓国側による拉致だとして報復を宣言して以降、厳しくなったようだ」と話している。

どうやら中国は、表向き外国人の安全確保のため、としながら、実際には観光客を国境から遠ざけ、未然にトラブルの種を摘んでしまおうとしているようだ。

中国側のこうした措置には、やむを得ない部分もあるように感じられる。

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北朝鮮は、レストランの女性従業員らの奪還を目指しており、金正恩氏が数十人の韓国人を拉致するよう指令を下したとの情報もある。

(参考記事:金正恩氏に「指名手配」された脱北美女たちの運命

また、中朝国境地帯では脱北支援者が何者かに首を切り裂かれて殺される事件も起きている。

中国当局が、自国の領土が北朝鮮と韓国の諜報戦の「戦場」となることを危惧したとしても、杞憂とばかりは言えない。

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近年、中朝国境では脱走した北朝鮮兵士による犯罪が頻発してきたが、北朝鮮が本当に何らかの工作活動を始めるなら、従来とは次元の異なる緊張感が、現地に漂うことになりそうだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記