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北朝鮮当局が、外貨稼ぎの一環として自国の労働者を海外に派遣し、劣悪な労働環境で働かせ給料を大幅にピンはねしている件は、深刻な人権問題として国際社会から強く非難されている。

そんな中、ポーランドの企業が、北朝鮮の労働者を大々的に受け入れ、国内の複数企業に派遣し、働かせていることが明らかになった。ドイツのメディア VICE Germany が詳細を伝えた。

同国で、北朝鮮の労働者が多数働いていることが明るみに出たのは、2014年に起きた労災死亡事故がきっかけ。グディニアのCRIST造船所で、40代の北朝鮮労働者が着ていた作業服に火が燃え移り、病院に運ばれた後に死亡した。

金正日氏に「剣」贈る

遺体は、637ユーロ(約7万9000円)のカネと共に北朝鮮に送り返された。

これは、2013年のポーランド平均月給860ユーロ(約10万6000円)を下回る金額であり、賠償金としては極端に少ないことは言うまでもない。

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現地の労災調査官が調査を行った結果、安全装備の未着用、労働時間が極端に長いなど複数の違反事例が発見された。調査の結果はまだ確定しておらず、同社の労働環境が改善されたかどうかは定かではないが、北朝鮮労働者は以前と変わらず働いている。

ポーランドの企業に北朝鮮労働者を派遣しているのは、ARMEX社だ。同社は、朝鮮労働党傘下にあり、国連の制裁対象に指定されている朝鮮綾羅島(ルンラド)貿易総会社と契約を結び、前述のCRISTやグダニスクのNAUTAなどの造船所、高級マンションを主に建設しているATAL社に、北朝鮮の労働者を派遣している。

人権侵害の現場に「支援金」

同社のシシリア・コヴァルスカ社長は2010年1月、金正日氏に剣を贈るなど、北朝鮮との親密ぶりをアピールしている。ちなみにこの剣は、北朝鮮・妙香山(ミョヒャンサン)の国際親善展覧館に展示されている。

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ATAL社は、ワルシャワとブロツワフの建設現場で、1日12時間労働させていることがVICEの調査で明らかになった。

CRISTやNAUTAは、NATOの艦船を含む、様々な船舶の建造・修理を行っており、経済発展に寄与したとの理由で、EUから過去5年間に7000万ユーロの支援金を受け取っている。つまり、人権侵害の労働現場にEUが支援金を出したということだ。

ある北朝鮮労働者はVICEとのインタビューに「給料をいくらもらっているのかわからない」「制服代も給料から天引きされる」「給料は2年半ごとの一時帰国する際に支給される」と答えた。

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EUとポーランドの労働法では、1週間の労働時間は、時間外労働を含めて48時間を超えてはならないと定めているが、月曜日から土曜日まで1日12時間、1週間に72時間働かされている北朝鮮労働者は、常に違法状態に置かれている。

「そんな事実は知らない」

しかし当局は、この問題に対して積極的に取り組もうと言う姿勢が欠けているようだ。

ポーランド国家労働検査局(PIP)のヤロスラフ・ツィホン氏によると、北朝鮮労働者が勤務している377ヶ所を調査した所、77ヶ所で違法状態が発見された。

しかし、ワルシャワの移民局の担当者は「違法状態を把握していない」と述べるに留まった。また、北朝鮮労働者に発行した労働ビザの数を1972件だと明らかにしつつも「職員のミスで韓国人と北朝鮮人が混じってしまい、実際に北朝鮮人に発行された数はわからない」と述べた。労働者の数を少なめに見せたい意図をうかがわせる。

ARMEX社のコヴァルスカ社長は、VICEの取材に対して「そのような事実は知らない」「嘘だ」「誰がそんなことを言ったのか」などと、法律違反、人権侵害を否定する

EUも消極的

また同時に、資金が朝鮮労働党に流れていることを知っていると語った一方で「我々は政治には興味がない」と、北朝鮮労働者の受け入れに対する道義的責任を否定した。

オランダ・ライデン大学のレムコ・ブロイカー教授は「北朝鮮は世界最大の違法職業斡旋所だ」「北朝鮮は国ではなく会社だ、北朝鮮株式会社、平壌株式会社だ」などと批判している。

消極的な姿勢を見せているのはポーランド当局だけではない。

EUはポーランドとマルタ以外の国で北朝鮮労働者を雇っている国について把握できていないということだ。