北朝鮮「拉致容疑者」の写真を公開…相次ぐ脱北事件を受け

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北朝鮮の対外宣伝ウェブサイト「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」が、6日から7日にかけて公開したと見られる記事に、韓国の情報機関・国家情報院(国情院)の指令を受け北朝鮮国民を「誘引拉致」したとする男性3人の氏名と顔写真などを掲載した。

これは、実質的な指名手配と言える。

首を切り裂かれ

北朝鮮当局は、脱北した女性たちの行動を縛るため、指名手配に等しい仕打ちを行っているが、今回はそれとも意味合いが異なる。

金正恩氏は、北朝鮮レストランの集団脱北に対する「報復」として、工作機関に韓国人の大量拉致を命じているとされる。また、中朝国境地帯では脱北支援者が首を切り裂かれて殺される事件も起きている。それらを踏まえると、上記の男性らの名前と顔写真の公開は「指名手配」であると同時に、「拉致指令」あるいは「殺害指令」であるようにも思えるのだ。

件の記事にはまた、彼らにより「拉致」されたとする女性3人の氏名と顔写真も掲載されている。

中国人女性も亡命!?

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中国の北朝鮮レストランで働いていた女性ら12人が4月、集団で韓国に亡命して以来、北朝鮮当局は「国情院による拉致だ」と繰り返し主張し、送還を要求。上記記事の女性3人は先月末から今月1日にかけて韓国に入国したが、これについても同様の主張を行っている。

わが民族同士の記事によれば、北朝鮮の主張はこうだ。

国情院の指令を受けた男性らは、昨年から身分を偽り女性従業員らに接近。韓国の政府や体制を批判するふりをして彼女らを信用させた。そして彼女らを市場に呼び出し、事前に準備しておいた乗用車数台に乗り換えさせながら、旅券もないまま中国国境を越え、ラオスとタイを経てソウルへと連れ去った――。

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韓国当局が彼女らの亡命経緯について明かしていないため、ここに真実がどの程度含まれているのか(あるいはまったくの嘘なのか)検証するのは難しい。

ただ、記事の内容をよく見ると、不思議な点に気づく。男性2人と女性2人は旅券番号が写真に添えられている。それを見る限り、男性2人は韓国国籍であり、女性2人は北朝鮮国籍だ。不思議なのは、旅券番号ではなく身分証番号が添えられた残りの男女だ。番号を検証したところ、男性は黒竜江省、女性は吉林省出身の中国人なのだ。

渦巻く謀略

朝鮮族をはじめとする中国人男性が、脱北支援などに関わるのは珍しくない。しかし、中国の女性が北朝鮮女性と一緒に韓国へ亡命し、なおかつ韓国がそれを受け入れ、そのことを北朝鮮が非難するとは、いったいどういうことなのか。

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この問題には、一般には明かされていない複雑な背景がありそうだが、韓国と北朝鮮の謀略渦巻く諜報戦と絡むことがらだけに、真相が見えてくるまでには時間がかかるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記