北朝鮮の「インチキ医療」に友好国も憤慨

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アフリカのタンザニアで、北朝鮮系病院が「インチキ治療」を行った容疑で、相次いで閉鎖命令を出されている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、同国には、北朝鮮の医師計100人以上が、外貨稼ぎのために派遣され、12の病院で勤務している。

麻酔なしで切開手術も

彼らは以前から、現地のハーバリスト(伝統医学の医師)らと結託して医療知識の乏しい患者を集め、正体不明の医薬品や機器を使ってインチキ治療を行っていた。さらに、高価な医薬品を売りつける行為を繰り返しており、タンザニア当局から目を付けられていたようだ。

こうした中、今年2月に開業したばかりの病院に対して3カ所目となる閉鎖命令が出された。閉鎖されたのは、タンザニアの最大都市ダル・エス・サラームの郊外ムベジ・ビーチ地区にある病院。壁にはスワヒリ語で「ここは2016年5月20日を持って閉鎖された」と書かれている。

現地事情に精通した情報筋によると、病院は西洋医学と伝統医学の施術を同時に行えないと規定しているタンザニアの法律に違反したことで閉鎖に追い込まれた。病院は、道端に立て看板を立てて、普通の病院では治せない病気も治療すると謳い、大々的に患者を呼び込んでいた。

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北朝鮮は、以前から、アフリカでの外貨稼ぎに力を入れている。蜜月関係にある赤道ギニアでは、自国の犯罪者を労働力として輸出。国連制裁による窮乏が強まる中で、節操のなさに拍車がかかっているようだ。

タンザニアのタンガニーカ地域の医事委員会のウェブサイトによると、同国で勤務している外国人医師43人のうち24人が北朝鮮出身と、極めて多い。いずれも平壌医学大学の出身で、住所はすべてダル・エス・サラーム私書箱46064号となっている。しかし、なぜか国籍は韓国(Republic of Korea)だ。

北朝鮮の医師たちは、かつてはモラルの高さで知られていた。それが、いくら外貨稼ぎのためとはいえ、インチキ治療によって評価が下がるのは、当の医師たち望んでいないだろう。いや、もしかしたら医療機器も医薬品が慢性的に不足し、手術をするのに麻酔薬すら使えないほどの苛烈な状況の中で、変質してしまっているのかもしれない。

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一方、タンザニア政府は、国連安保理で採択された対北朝鮮制裁決議2270について公式の立場を明らかにしていないが、以前からアンゴラ、ウガンダと共に、北朝鮮と軍事協力や武器取引を行っていると指摘されている。こうした疑惑を晴らすためにも、北朝鮮系病院の取り締まりに力を入れているという見方もある。

タンザニアの英字紙「シティズン」は、今年3月の制裁決議2270の採択に際し、インチキ医療に加え、閉鎖性、人権侵害などを指摘し「北朝鮮の行動は、タンザニアを含むすべての国が非難すべきだ」と論じている。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記