背景には、北朝鮮国内では「中国が制裁に同調している」という話が広まるにつれ、一般住民や保衛部関係者の間で、露骨な反中感情が高まっていることがある。このような感情は、昨日今日のことではなく、長年にわたって積み重なったものだ。
1982年秋の訪朝の際の体験談を綴った「凍土の共和国」(金元祚著)には、華僑が「大物のヤミ屋、仲介人」をしているという記述がある。
同書によると、華僑は幹部にワイロをつかませて、自由に商売をしており、政府の役人も社会安全部(現在の人民保安部、警察)の幹部も見て見ぬふりをする。ヤミ屋を見せしめで逮捕する際にも、華僑には事前に情報が流される。彼らは、中国大使館に逃げ込んで身の安全を確保し、万が一捕まった場合でも、大使館から圧力をかけてもらい釈放させるというのだ。
また、新義州(シニジュ)在住のデイリーNK内部情報筋、キム・チャンヨル(仮名)氏によると、華僑は北朝鮮の人々が住むマンションではなく、玄関に大きな「福」の字を掲げた立派な瓦屋根の一軒家に暮らしていて、街で一番の金持ちだという。