ちなみに、キム・ソンミさんは記事中では「リ・ソンミ」と書かれており、どちらかが誤記と思われる。また写真を見た印象では、リュ・ソンヨン(24)さんとリ・ウンギョン(37)の名前と年齢に混同があるようにも思える。
同通信によれば、12人は現在、韓国国家情報院の取り調べを受けており、北朝鮮に残された家族たちは、韓国の「民主社会のための弁護士の会」に本人たちとの接見を委任。しかし、同会の接見要求を、国情院は拒否しているという。
民族通信は4月12日付の記事でも、この集団脱北は、韓国の総選挙(13日投開票)で保守派を有利にするため朴槿恵政権が仕組んだ「でっち上げ事件」であると主張している。同通信は、「韓国の国家情報院(国情院)に誘拐されそうになった」という北朝鮮の若者らを平壌で取材。それを根拠に、レストラン従業員らの脱北も同様の出来事であると言っているわけだ。
(参考記事:北朝鮮ウェイトレスの集団脱北の裏で「スパイ組織」が暗躍!?)一方、北朝鮮当局は、同じレストランの元従業員で脱北に加わらなかった女性らや残された家族による合同記者会見を開き、「韓国側に拉致された」と強く主張させている。
(参考記事:美人ウェイトレスは良家の出身…「北朝鮮レストラン」の舞台裏)脱北した女性らは、いずれもエリート家庭の出身とされ、自国の体制を嫌って逃げ出したと認めることは、北朝鮮にとって様々なリスクをはらんでいるのだろう。本人たちの顔写真公開も、あくまで「拉致」の主張を貫く姿勢の表れと言える。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。