「覚せい剤」なしでは仕事がはかどらない!? 金正恩氏のジレンマ

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮で6日から開かれていた36年ぶりの朝鮮労働党第7回大会が閉幕した。大会期間中、北朝鮮当局は全国民に対して「出勤して朝鮮中央テレビを視聴せよ」という指示を下した。テレビ放映を通じて、金正恩党委員長の「偉大性」と党大会の意義をすり込むためだ。

テレビ放映のため、電力事情の悪い農村地域に電力を特別供給するほどの力の入れようだったが、その一方で、多くの工場、企業所に対する電力供給がなくなり、稼働が停止するなど本末転倒の事態まで発生した。

覚せい剤不足が党大会に影響

北朝鮮当局は、躍起になって党大会の宣伝を徹底化しているが、多くの庶民が党大会自体に関心を持たなかった。それどころか、党大会前後から強化された統制への反発を強めている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、党大会期間、多くの企業所(会社)は通常より1時間早い午前7時出勤や、職場単位で金日成氏、金正日氏のモザイク壁画の前で追悼式典を行い、指定された場所でテレビを視聴することを義務づけられた。

さらに、「テレビを見る時は、絶対に酒を飲んではならない」という指示まで下される。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

党大会に興味を持たない人々が、事実上の休日に出勤させられ、酒を飲みながらダラダラと朝鮮中央テレビを見て、くだを巻き、挙げ句の果てには酔った勢いで反体制的な発言をしかねないからだ。

こうしたなか、なぜか覚せい剤の価格が大幅に上昇しているという。

覚せい剤ダイエットも

医薬品不足の北朝鮮で、その代用として麻薬は使われてきた。最も広く使われているのが「オルム」「ピンドゥ」(いずれも氷の意味)と言われるメタンフェタミン、すなわち覚せい剤だ。薬物使用の危険性に関する教育が行われておらず、青少年の間でも蔓延している実態がある。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

覚せい剤の罠には、とりわけ富裕層の青少年がはまるケースが多いが、朝鮮労働党の幹部や富裕層の間では、風邪予防程度のクスリととらえられている。それどころか、「ダイエット目的」で覚せい剤を使用する女性が急増しているという驚くべき情報もある。

覚せい剤の価格は、4月15日以前は1グラムあたり中国人民元で50元(約824円)だったが、最近は、200元(約3296円)まで高騰。これは、咸興(ハムン)や順川(スンチョン)発の流通ルートが、特別警戒で遮断されたことによる。

この影響で、党大会に向けて繰り広げられてきた大増産運動「70日戦闘」に関連する建設工事が、未完成のままだ。その理由は、覚せい剤中毒の突撃隊員(建設工事に動員された人々)たちがクスリを入手できず、仕事がはかどらなかったからというから驚く。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

金正恩氏は、覚せい剤に対しては厳しく取り締まる姿勢を見せている。ところが、自身の成果にするための事業が、覚せい剤不足によって、滞るという実に皮肉な結果になったようだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記