たとえば北朝鮮の権力構造について語るとき、「軍部強硬派の反発」「軍部の暴走」などに言及したがる向きが少なくない。しかし実際のところ、そんなものは根拠のない作り話に過ぎない。北朝鮮にはそもそも、「軍部」と言えるような権力グループが存在しないからだ。
「軍部」とは、高級参謀から指揮命令系統で現場将校につながる「縦のライン」、士官学校での同窓関係でつながる「横のライン」、縁戚関係でつながる「斜めのライン」が絡み合い、政治に影響を及ぼす権力グループとして構成されるものだ。
北朝鮮ではたとえ軍幹部といえども、こうした私的な人脈作りは許されない。実際、1990年代にはソ連留学組の「同窓会」が血の粛清を受けており、それ以来、軍人たちへの統制はさらに強まった。
(参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件)見世物のように虐殺
ならば、北朝鮮の軍が体制に牙をむくことは絶対にあり得ないのかといえば、上記のような事情に変化の様子もうかがえる。