北朝鮮、36年ぶりの労働党大会開催の狙いは

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北朝鮮の朝鮮中央放送は27日、「党中央委員会政治局は、朝鮮労働党第7回大会を2016年5月6日、革命の首都平壌で開会することを決定する」と報道した。

北朝鮮が労働党大会を開催するのは1980以来、36年ぶりだ。昨年10月30日に、党大会を開催すると発表した。労働党規約によると党大会の収集は5ヶ月前にしなければならない。

その後、北朝鮮は、各級機関別に代表会を開き、党大会に参加する代表者などの手続きを進めてきた。労働党規約によると、党大会では、以下のようなことが議論される。

●中央委員会・党中央検査委員会の事業総括(分析) ●党の綱領と規約の採択または修正・補充 ●党の路線と政策・戦略・戦術の基本的な問題討議決定 ●党総書記推戴 ●党中央委員会と党中央検査委員会の選挙などを行う。

今回の労働党大会は、金正恩第1書記が発足して以来、初めて開かれる大会だ。さらに1980年10月以来、36年ぶりの大会ということでは、大きな意味を持つ。しかし、金正日総書記時代には、一度も開かれなかった労働党大会をなぜこのタイミングで開催するのか。

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最大の狙いは、金正恩氏が、国内外に向けて、名実ともに北朝鮮の最高指導者であることをアピールするためだ。父でさえ開けなかった党大会を開くことによって、自分の権威を高め、絶対的独裁者として君臨するためだ。

労働党大会は、原則的に5年に1度、開催しなければならないが、金日成主席時代に開催された第6回大会以後、北朝鮮経済が悪化したことにより、開催できなくなった。

94年に、金日成の急逝によって最高指導者となった金正日は、経済崩壊という非常事態を乗り切るため「先軍政治」を掲げ「党」よりも「軍」を重視。労働党の役割と存在意義は極端に低下し、具体的な成果もなく党大会を開くことができなかった。また、国防委員会を中心とした政策決定をしていたため、党大会を開催する必然性もなかった。

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 しかし、先軍政治や国防委員会中心の国家運営は、軍部の肥大化と経済停滞という副作用を生み出し、晩年の金正日氏は、党への権力移行を目論んでいたようだ。息子・金正恩氏に軍部をコントロールするのは難しいと判断したのだろう。しかし、2011年に死去。

 後を継いだ金正恩体制では、事実上のナンバー2だった叔父・張成沢氏が、軍から党への権力移行を進めたが、その過程で党・軍からも恨みを買い、さらに張成沢氏に権力が集中することを恐れた金正恩氏によって粛清・処刑に追い込まれる。それを皮切りに、正恩氏は、軍の高幹部などを次々と処刑して、絶対的権力を構築しようとしている。

(参考記事:金正恩氏は「人道に対する罪」で破滅の瀬戸際にある

 既に、金正恩氏に物を言える人物は皆無と言っていい。しかし、正恩氏は、それだけでは飽き足らず、父を越え、さらに今なお北朝鮮ではカリスマ性を持つ偉大な祖父・金日成に並び立とうとしている。

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しかし、党大会とは少々強引な例えだが企業で言えば「株主総会」にあてはまる。例え、議論内容、決議内容が、筋書き通りとはいえ、友好国の代表団を来賓として招き入れ、明確な成果、今後の展望などを示さなければならない。

5月の党大会がお粗末な内容で終われば、金正恩氏の権威は失墜するというリスクも存在する。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記