北朝鮮、海外に「インチキ病院」の怪ビジネス

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アフリカのタンザニアでは、北朝鮮の医師計100人以上が、12の病院で勤務している。友好国同士であり、医師らは外貨稼ぎのために派遣されたものと思われるが、どうやら行状に行き過ぎがあったようだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)などによれば、タンザニア保健省が最近、北朝鮮の医師らが「インチキ医療」を行っていた2つのクリニックを抜き打ちで検査し、即時閉鎖命令を出した。

問題のインチキ医療は、中国製や北朝鮮製の「量子共鳴磁場分析器」(Quantum Resonance Magnetic Analyzer、QRMA)なる検査機器を使って行われる。医学的根拠は定かではないが、日本でもPRA療法と称して、治療に取り入れている代替医療機関は存在する。

北朝鮮の医師は、現地のハーバリスト(伝統医学の医師)と共謀して患者を集め、採血すらすることなく、たった1、2分の検査で診断。あたかも重い病気であるかのごとく説明し、高価な医薬品を高値で売りつける行為を繰り返していたという。

北朝鮮の医師は、かつてはモラルの高さで知られていた。医療機器も医薬品が慢性的に不足する中、彼らの技量と職業的使命感だけが庶民らの命の支えだった。しかしそれも、あまりの境遇の苦しさの中で変質してしまっているのだろうか。手術をするのに麻酔薬すら使えないほどの苛烈な状況の中では、彼らだけに「まともであれ」と求めるのも無理なのかもしれない。

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また、海外にまで出かけて人々の命と健康を玩具にするようなことをしていては、たとえ金正恩体制が倒れて民主化する日が来ようとも、北朝鮮の将来に禍根を残す。実際この件に限らず、アフリカでも北朝鮮の悪評は増してきている。

しかし北朝鮮の医師たちとて、おそらくは無理な外貨獲得のノルマを課され、やむなく違法な商売に手を染めていると思われる。リビアに派遣された北朝鮮の医師の中には、武装勢力「イスラム国」に拉致され、殺されてしまった者もいると聞く。

ならばいっそ、彼らに韓国などへの亡命を促せないものだろうか。美人ウェイトレスの集団脱北と同様、北朝鮮の外貨獲得の余地を狭めることにもつながり、有効な制裁手段にもなり得ると思うのだが。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記