金正恩氏の「引きこもり」が進行中…労働党大会日程いまだ公表されず

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北朝鮮は5月に36年ぶりという「朝鮮労働党第7次大会」を控えている。しかし、韓国からは5月7日に予定されているという説が出たものの、いまだに正確な日程がアナウンスされていないという不可解な事態が起こっている。

朝鮮労働党は、北朝鮮の支配政党である。党大会とは少々強引な例えだが企業にあてはめれば「株主総会」だ。例え、議論内容、決議内容が、筋書き通りとはいえ、友好国の代表団を来賓として招き入れ、明確な成果、今後の展望などを示さなければならない。そして朝鮮労働党、金正恩第一書記の権威を高めるというのが大きな目的だ。逆に言えば、5月の党大会がお粗末な内容で終われば、金正恩氏の権威は失墜するというリスクも含まれる。

(参考記事:金正恩氏が、何だかシュンとしている)

では、なぜ党大会の正式な日程が発表されないのか筆者なりに分析してみたい。

まず、金正恩が「来い」と言えばすぐに馳せ参じなければならないお国柄を考えれば、日程の発表がギリギリになるのも不思議なことではない。

つぎに、早期に日程を発表すれば、正恩氏がいつ、どこにいるのかを米韓に知らせてしまうことになる。「斬首作戦」を警戒している北朝鮮としては、保安面から日程を明らかにできない。

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そして、弾道ミサイルを発射したうえで党大会を開きたい。党大会前の発射なら、成功した場合は「成果」として誇れる。そして、失敗ならダンマリを決め込めば良い。しかし党大会で発射を宣言し、大会後の発射で失敗したらメンツが立たない。だから大会前が良いのだが、成功の可能性を高めるためには天候を読まねばならず、大会日程の最終決定が遅れてしまう。

こうした事情から、日程を明らかにしていない可能性がある。さらに突っ込んで、深読みすれば金正恩氏は、「明らかにしたくない」と考えてもおかしくはない。つまり、名前こそ「党大会」だが、実質的な密室会議でいいと思っているのかもしれない。

先述のように党大会には、各国の代表団を招かなければ格好がつかない。おそらく一部の友好国、たとえばシリア、ベトナム、ラオスなどには既に日程を知らせ、代表団も参加するかもしれない。しかし、その他の国々は意図的に知らせない、または直前になって知らせる。そして、予定がつかなければ「参加しなくてもいい」。その裏には、下手に大会に参加されるよりも、気心の知れた友好国だけ呼んで大会を開いて体裁を整える。諸外国の来賓は、呼びかけたが参加できなかったから仕方がないーーこうしたアリバイ作りを狙っているという見方もできる。

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そもそも、金正恩氏は、2011年に最高指導者になって以来、どの国の国家元首とも会談を行っていない。今後も、よほどの友好国でない限り、積極的に会談をしようという国は現れそうにない。つまり、どうせ対外的に権威をアピールできないのなら、いっそのこと来なくてもいい。それでも党大会を開いたという実績は残したい。あくまでも憶測の域を超えないが、国内では無双だが、国外的には引きこもり気質が見え隠れする正恩氏ならいかにも考えそうなことだ。

問題は、こうした金正恩氏の引きこもり気質のそのしわ寄せが北朝鮮国民に及ぶこと。そして、国際社会が正恩氏の気まぐれにつきあわされ、核・ミサイル問題をはじめ、北朝鮮問題の解決が遠のくことだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記