米ジョンズホプキンス大学国際大学院(SAIS)韓米研究所のキム・ヨノ専任研究員が、外交専門誌「フォーリン・ポリシー」への寄稿文で、北朝鮮に外部世界の情報を流入される取り組みを強化するため、無人航空機(ドローン)を積極活用することを呼び掛けている。様々な情報を大量に記録したUSBメモリやSDカードを、ドローンを使って北朝鮮国内に送り込もうというのだ。
北朝鮮が、外部情報の流入に神経を尖らせているのは周知のとおりだ。それが単なるドラマの類であっても、国内に搬入したり流布させたりしたことが当局にバレたら、死刑を含む厳罰に問われることになる。
(参考記事:北朝鮮が女子高生を「見せしめ」公開裁判にかけた理由)しかしドローンを使えば、情報のやり取りに関与する人の数を極力減らすことが出来るので、比較的低いリスクで事を運ぶことができるというわけだ。
ドローンは、すでに北朝鮮と韓国の宣伝戦に投入されているが、今はむしろ北朝鮮の方が活用に積極的だ。韓国国内に宣伝ビラを散布するついでに、重量のあるモノを空から落とし、自動車や貯水タンクをぶっ壊してもいる。
韓国軍は、そうした動きを阻止出来ておらず、ドローンの隠密性の高さが証明された形と言える。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そして、こうした状況を見ていてふと思ったのが、日本政府は何らかの情報を用いて、日本人拉致被害者の情報を北朝鮮国内に流布させるべきではないか、ということだ。北朝鮮にも、体制に反感を抱く人は大勢いる。拉致問題の真相を最終的に解明するためには、いずれそうした人々の助けを借りることになる。
しかし、こちらがどういった人々を探しているかが彼らに伝わらなければ、具体的なレスポンスは期待できない。
もちろん、そうした取り組みは膨大なコストがかかるし、様々なリスクを伴う。しかし、マスコミはかまととぶって書こうとしないのだが、すでに金正恩体制との日朝国交正常化は可能性が消滅したも同然であり、対話の余地はほとんどなくなっているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ならば、ほかにどのような道があるのか。それを考える上で、日本政府は無根拠に、「いずれ金正恩氏も大人しくなるだろう」などと期待してはいけない。むしろ、彼の暴走は行くところまで行くと考え、それにつれて強まる北朝鮮の国内矛盾を利用することをこそ、考えるべきではないだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。