北朝鮮の核弾頭小型化は日本にとっての「今、そこにある危機」だ

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北朝鮮の核兵器開発を巡り、韓国発のニュアンスの違う情報が流れている。米CNNは「韓国政府当局者は7日までに、外国人記者団との会見で、北朝鮮が核弾頭を中距離弾道ミサイル『ノドン』に搭載できる大きさにまで小型化することに成功した可能性があるとの見方を示した」と報じた。

一方、韓国の韓民求国防相は6日、同国記者団とのインタビューで、北朝鮮が核弾頭の小型化を「達成したとは確認できない」と述べている。

いずれも「成功した」、あるいは「成功していない」と言い切ってはいないので、大意としては同じ話だ。しかし、「成功した可能性」をどの程度と見積もるかは、非常に重要と言える。なぜならこの問題こそが、日韓にとって「今、そこにある危機」に他ならないからだ。

北朝鮮の核兵器開発は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発とセットで論じられることが多い。その理由は、「北朝鮮がいつ、米本土を核攻撃できるようになるか」が主眼となっているためだ。

しかし、北朝鮮は日本の大半を射程に収めるノドンを多数、実戦配備している。日本や韓国、在日米軍基地を狙うのに、ICBMなど必要ないのだ。

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むしろ、日本の防衛を考える上では、北朝鮮による固体燃料推進ロケットの開発動向に注目した方が良い。北朝鮮が使用している液体燃料ロケットは、発射前に燃料を注入しなければならないため、普段は地下に隠れている移動式発射台も、1時間ほど地上に露出することになる。ところが固体燃料を使えば発射前の注入を省くことが出来るので、事前の探知が難しくなるのだ。

朝鮮半島を取り巻く軍事情勢は、ほんの数年前と比べても様変わりしている。米韓は金正恩氏に対する「斬首作戦」を導入しようとしているし、日本は集団的自衛権の行使に踏み込むことで、北朝鮮の潜水艦を先制攻撃すらことすらあり得る状況になった。

北朝鮮による核弾頭小型化と固体燃料ロケット開発は、ふたつの面で東アジア安保の緊張を高める。ひとつはここまで述べた通り、北朝鮮の核攻撃能力の向上だ。そしてもうひとつは、そのような脅威にさらされた日米韓が、北朝鮮に対する先制攻撃オプションに傾斜することによって生じるものだ。

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有事に際し、北朝鮮の核攻撃能力を殺ぐためには、米国製のF-22やF-35といったステルス機による敵基地攻撃能力の向上が議論されることになる。そして、そのことが北朝鮮をさらに刺激し、緊張が激化していく。

繰り返し言うが、朝鮮半島と日本を取り巻く軍事情勢は、かなりのスピードで変化している。不安要素を最少化するためにも、金正恩氏の情勢観や世界観に対する分析の必要性が高まっている。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記