「金正恩vsトランプ」で東アジア危機の「本番」が始まる

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米大統領選の共和党指名争いで独走状態の実業家ドナルド・トランプ氏が、米紙ニューヨーク・タイムズ電子版が26日に掲載したインタビューで、日本や韓国が駐留米軍の経費負担を大幅に増額しない場合、撤収を検討するとの従来の主張を繰り返した。今回はさらに、日韓両国の核保有を容認する考えも述べている。

トランプ氏が、朝鮮半島を中心とする北東アジアの安保情勢についてどの程度の認識を持っているのか、筆者にはわからない。いずれにしても、北朝鮮が核戦力の実戦配備を急ぐ現在の環境の中、万が一こうした主張が現実味を帯びるようなことになれば、北東アジアでは本格的な軍拡競争が起きるかもしれない。まさに東アジア危機の「本番」ともいうべき事態だが、少なくとも、そうした雰囲気は強まるのではないだろうか。

そのような事態を受けて、北朝鮮の金正恩第1書記は慌てるだろうか。国力では日本や韓国の方がはるかに上回っているのだから、軍拡競争で北朝鮮には勝ち目はない。せっかくなけなしカネをつぎ込んできた核・弾道ミサイルも、無用の産物になってしまうのではないか――。

と、このように考える向きもあるかもしれないが、実際にはそうならない可能性の方が高い。

北朝鮮が核開発を強行し続けられるのは、金正恩氏が明確に「核武装した独裁者」を目指しているからであり、その陰で国民に多大な犠牲を強いながらも、世論の反発を受けて退陣させられる心配がゼロだからだ。

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しかし、民主主義国家である日本や韓国で軍拡の主張、ましてや核武装論などが巻き起これば、強力な反対論が巻き起こり、政治が混乱に陥るのは必至だろう。

かつて中曽根康弘元首相は防衛庁長官在任時、日本の核武装の可能性について極秘裏に調べさせた。その結論は、「技術的には可能だが、国土の狭い日本には核実験場がないのでムリ」というものだったという。

それでも核開発を強行するようなら、巨大なデモを呼び起こし、政権はすぐに倒されてしまうだろう。

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一方、日本が狭いというなら北朝鮮はもっと狭いが、言論の自由がないので、住民の反対運動など起きようもない。デモなどをすれば、軍隊に虐殺されるか、政治犯収容所で拷問され処刑されてしまう。

ということはつまり、北朝鮮は核開発を行っているからだけでなく、それ以前に独裁国家であることが問題なのである。そして、その問題と向き合うことなしに、日本と東アジアの安全保障を考えることはできないのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記