北朝鮮の権力機関やメディアが連日、「総攻勢」「先制攻撃」など過激な表現で米韓合同軍事演習への反発を強めている。だが実際のところ、北朝鮮はそのような“勇ましい”行動に出ることができるのだろうか。
その答えは「ノー」とすべきだろう。ただでさえ米韓連合には劣勢である上、演習のため朝鮮半島に米軍の戦力が集結している条件下で手を出すのは愚の骨頂である。
だからといって、北朝鮮が何ら手出しをしないとも限らない。
韓国政府ではいま、北朝鮮による大規模サイバーテロの脅威が増大しているとして緊張感が高まっている。国家情報院によれば、北朝鮮は4回目の核実験以降、すでに重要施設のウェブ・サイトや重要人物のスマートフォンなどへのサイバー攻撃を繰り返しているという。そうした任務を担うのはゲーム会社などのITエンジニアとして海外に派遣された秀才たちであり、その行動は完璧には把握されていない。
北朝鮮によるサイバー攻撃と言えば、「金正恩氏暗殺映画」を制作したソニーの映画子会社、米ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)への大規模なハッキングが思い出される。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面もっとも、この事件については北朝鮮犯行説に一部で疑問符が付けられているのも事実だ。
一方、当の北朝鮮は「犯人」として断定されたことに猛反発したが、その後は少し開き直ったのか、「絶妙無双のサイバー戦で米国の滅亡を早めてやる」などとする声明も発表している。もしかしたら金正恩第1書記は、外国から「北のサイバー戦能力はヤバい」と言われることに、世界の先端を走っているようで悪い気がしていないのかもしれない。
もうひとつ、北朝鮮による嫌がらせの手段になりそうなのが、無人航空機(ドローン)部隊による「爆撃」である。これは、すでに韓国に対して行われているものだ。
(参考記事:北朝鮮のドローン部隊が韓国を「爆撃」している)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
もちろん、韓国の領土に本物の爆弾を落とそうものなら、米韓軍から数百、数千倍の報復を受けるのは避けられない。だが、普通の感覚では思いつかない、何か意外なものを落として韓国国民の不安感を誘う、というような心理戦ぐらいならやるかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。