韓国社会に及ぶ開城工団閉鎖の余波

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対北朝鮮制裁の一環として、先月閉鎖された先月閉鎖された北朝鮮の開城(ケソン)工業団地。閉鎖に伴うダメージが進出企業のみならず、韓国社会にも及びつつあるが、韓国政府はこれといった対策を取ろうとしていない。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材によると、開城に進出していた企業の多くが従業員を解雇していることが明らかになった。

元々開城工業団地に進出していた韓国企業は123社で、勤務していた韓国人従業員は800人に及ぶ。経営の厳しい中小企業が多かったが、閉鎖に伴って生産が中断したため、耐え切れなくなった一部企業が従業員を解雇しているというのだ。

あるアパレル企業は、従業員7人のうち6人を解雇したことが明らかになった。この企業の関係者は「退職勧告で辞めた人もいるが、展望が真っ暗だとして自分から辞めた人もいる」と語った。

文房具製造会社で勤務するホン・ジェワンさんは「企業の受けたダメージが大きいのに、メディアにも政府発表にも労働者の救済については触れられていない」「辞表を出すことを迫る会社が多いと聞いた。実際、開城で働いていた従業員の多くが辞表を提出した」と述べた。

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韓国のニュース1によると、進出企業123社のうち、56社は営業利益が5億ウォン(約4618万円)に満たない零細企業だった。また、72社は生産の70%、49社は生産の100%を開城工業団地で行っていたがため、生産が全くできないか、ほとんどできない状況に追い込まれている。

また、非常対策委員会が120社に調査を行った結果、持ち出せなかった生産設備や製品などの被害額は8152億ウォン(約753億円)に達するという。

このような状況にも韓国政府には賠償を行う動きはない。柳一鎬経済企画相は「取引企業が、開城進出企業の納品や代金支払い期限の延長に協力して欲しい」と述べるに留まっている。

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別の韓国政府関係者はマネートゥデイに「被害を受けた企業からの聞き取り調査を行った上で対策案を検討するかもしれないが、今のところは対策を立てていない」と述べた。

韓国政府は、被害を受けた企業に対して5500億ウォン(約508億円)の特別融資を行う方針だ。また、全羅南道の霊光郡が郡内の工業団地への進出を支援したり、ロッテ百貨店が支援セールを行ったりしているが、いずれも焼け石に水だ。

開城工業団地で製造された商品を扱う「開城工団商会」はデイリーNKジャパンの取材に対して「そのうち閉店せざるを得なくなるが、今のところは商品が確保されているので大丈夫だ。新製品の生産中に工業団地が閉鎖されたが、製品は運び出せた」と述べた。しかし、ここでの売上も微々たるものだ。

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閉鎖の影響は取引先、下請け企業、消費者にまで及んでいる。開城工業団地非常対策委員会の関係者は「開城工業団地に進出していた企業のみならず、取引先や5000社にのぼる下請け企業とその従業員12万5000人にまで悪影響が及んでいる」と述べた。

韓国のニュース1によると、非常対策委員会の関係者の話として、中高生の制服を作っていたある企業は取引先の「ヒョンジエリート」から賠償を要求されていると伝えた。これは閉鎖にともなって、納品が遅れたことによる。同社は賠償が得られるまで16億ウォン(約1億4770万円)の決済を停止している。両社ともに資金繰りが非常に厳しく、韓国政府が対策に乗り出さない限りは倒産は避けられないとの声も上がっている。

また、完成した制服8万着が持ち出せなかったことで、3月の入学までに制服が得られないと訴える新入生や父兄が続出している。