対北朝鮮制裁に待ったをかける金正恩氏の「仲間」たち

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北朝鮮による核実験や事実上の長距離弾道ミサイルの発射に対し、国連の安全保障理事会では米国主導で日本時間の2日にも制裁決議案の採決が行われる見通しだったが、ロシアの要請で1日延期され、決議案の内容も一部だが緩められた。

これは、十分に予想できた展開だ。日本のメディアは中国の動向にばかり注目していたが、むしろロシアの方が、あからさまに対北制裁に反対し、それどころか北朝鮮の暴走は「米国のせいだ」とさえ言ってきたからだ。

日本のマスコミは、北朝鮮が「完全に孤立している」ということを前提に記事を書く傾向があるが、それは明らかに間違いだ。

そもそも、核実験やミサイル発射を行えば制裁が加えられるのは明らかであるのに、それでも金正恩氏が敢えて強行を選択するのは、単なる強がりの部分もあろうが、経済制裁を受けても完全に干上がることは無い、という自信があるからでもある。

たとえば、北朝鮮はアフリカを舞台に、外貨獲得ビジネスを活発に展開している。昨年には、北朝鮮がアフリカ第3の産油国・赤道ギニアから30億ドル規模のIT事業を受注したというニュースもあった。

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国連安保理決議による対北朝鮮制裁の履行状況を監視する専門家パネルは最新の報告書で、「制裁破り」が横行している現状を指摘。北朝鮮とアフリカ諸国などとの武器関連取引が継続しているとして、「制裁の効果に深刻な疑問がある」との懸念を示している。

北朝鮮とこのような取引を継続している国々は、おそらく確信犯的に行っているのだろう。世界には、日本や韓国のように、米国と安保上の利害を一致させている国ばかりでないということだ。

むしろ、米国と対立する国にとって、北朝鮮は「頼もしい存在」として映っている可能性もある。その筆頭がシリアだ。

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シリアに北朝鮮を潤すような国力はないとしても、その背後にはロシアがいるしイランもいる。

もちろん、国際社会の包囲網が北朝鮮の外交に何ら影響を及ぼしていないわけではない。一部の国では北朝鮮への視線が厳しくなっているし、とくにアフリカのボツワナが人権問題を理由に北朝鮮との国交を断絶したことは、やはり北朝鮮にとってもショックだったようだ。

(参考記事:北朝鮮にアフリカから痛烈な一撃…「国交の価値なし」

現在、ジュネーブの国連欧州本部で開かれている国連人権理事会では、北朝鮮の人権侵害への具体的な対応策が話し合われている。安保面だけでなく、人権の側面も含め北朝鮮の問題点を総合的にとらえてこそ、効果的な対応措置が可能になるのではないか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記