北朝鮮の「ドローン(無人航空機)部隊」が韓国の首都圏を無慈悲に「爆撃」し、色々なモノを破壊している。
といっても、空から落とされているのは火薬の詰まった爆弾ではなく、大量の「紙」だ。先月6日に北朝鮮が行った核実験に対し、韓国は拡声器による宣伝放送を行うなどの対応措置を取っている。それに対して北朝鮮は、韓国に向けて大量の宣伝用ビラを飛ばし始めたのだが、その一部が「ビラ爆弾」となって自動車や住宅施設を壊しているのだ。
(参考記事:北朝鮮の宣伝ビラが韓国乗用車を無慈悲に粉砕…ドローンで散布か?)
ただの紙とはいえ、何万枚もまとめればかなりの重量になる。そんなモノがいきなり上空から落下してくるのだから、危険なことこの上ない。
そして、ここでひとつの疑問が浮かぶ。北朝鮮は、本当に効果があると思って宣伝ビラを飛ばしているのだろうか。大昔、北朝鮮が経済的に韓国を凌駕していた時代ならまだしも、いまどき時代遅れの独裁国家の口車に乗るのは、ごく一部の特殊な思想を持つ人だけだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面となると、北朝鮮の目的は別のところにあるのではないか。もしかしたら、ドローンで韓国領内にモノを落とす訓練をしているのではないのか。小さなドローンでは、本格的な爆弾を運ぶことはできない。しかし韓国社会に混乱を起こすためであれば、数キログラムの小さなものを、大量に落とす方が効果的とも言える。
韓国の国家情報院によると、北朝鮮の金正恩第1書記が、対南テロとサイバーテロの準備を進めているとの情報もある。
一方、韓国側では南北軍事境界線(MDL)地帯に北朝鮮の無人機(ドローン)が多数侵入したとの想定の下、攻撃編隊を緊急発進させる防衛制空訓練などを実施している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、米軍は今月に入り、陸軍第75レンジャー連隊などの特殊部隊を韓国にローテーション配備したと発表したが、これは韓国軍の金正恩「斬首作戦」と連動している可能性が高い。
来月7日からは、米韓合同軍事演習が過去最大規模で行われる。北朝鮮が、激しく反発するのは必至だ。朝鮮半島情勢は、いよいよきな臭さを増している。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。