日本「対北朝鮮外交」のトホホな実態

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日本政府は10日、国家安全保障会議(NSC)を開き、核実験とミサイル発射を強行した北朝鮮に対する独自の追加制裁措置を決めた。北朝鮮向け送金の原則禁止や、日本への再入国・入港を認めない対象の拡大が柱だが、実質的な効果はほとんどないだろう。

たとえば、北朝鮮への送金は現在、3000万円までは報告義務がないが、これが「人道目的かつ10万円以下」を除いて禁止となる。しかし、日朝間の貿易はすでにゼロであり、決済のための送金需要はない。

また、在日朝鮮人が親族などにおカネを送る際も、必ず人づてで行う。なぜなら、北朝鮮の銀行はすべて国営であり、あの国で、国家ほど信用できないものはないからだ。時に、自分の預金を下ろすのに役人からワイロを求められるような国へ送るのに、銀行送金を利用するもの好きはいない。

近年、日本の対北政策といえば、こうした「何かやってるフリ」がほとんどだ。しかし、それも仕方のないことかもしれない。なぜなら、対北外交を担う外務省の担当部門はきわめて所帯が小さく、満足な調査・分析ができると思えないからだ。北朝鮮との交渉現場で彼らは、国家安全保衛部という巨大秘密警察を相手にしなければならないにもかかわらずである。

(参考記事:巨大秘密警察に当たって砕けた日本外務省「たった6人のサムライ」たち

しかも、こうした現状が改善される見込みもない。外務省独特の歪んだ「キャリアパス(出世の仕組み)」のせいで、若いころから真面目に北朝鮮問題に取り組むほど、出世の出来ない「悲哀」が避けられなくなっているからだ。

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さらに、これに加え省庁間の「タテ割り」による弊害もある。外務省の極秘行動を防衛省や公安警察がスパイするという笑えない状況が、現実に繰り広げられているのだ。

安倍首相が鳴り物入りで設置した国家安全保障会議(NSC)にしても、昨年夏の朝鮮半島の軍事危機に際しては実にのんびりした対応しかしておらず、見ていて「大丈夫か?」と心配になったほどだ。

北朝鮮に何かをさせようと思うなら、日本政府はまずは自分の足元から固めるべきだろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記