「核とミサイルがドルを燃やした」北朝鮮国内の反応

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北朝鮮は先月6日の核実験に続いて、7日には「長距離弾道ミサイル」を発射。金正恩体制は、さっそくこの「二つの成果」を大々的に宣伝しようとしている。翌8日には、首都・平壌市で「光明星4号」の打ち上げ成功を祝う慶祝大会が開かれた。

大会では、「米帝がヒステリーを振るっている」だの、「こっぴどい懲罰を免れられない」と言いながら、いつもながらの過激な「口撃」で対米姿勢を露わにした。

その一方で、国内からは冷笑と不安が入り交じったホンネも聞こえてくる。

実は、先月6日に水爆実験が行われ、同日に「特別重大報道」が予告された時、「金正恩氏が死んだのではないか!?」と早とちりした人もいたという。過去の「特別報道」で、金正日総書記の死去が伝えられた経験があるためだ。これ以外にも、「水爆ひとつで敵を吹っ飛ばせるなら、こんなキツイ訓練やめちまえ」と愚痴る北朝鮮住民もいた。

今回のミサイル発射に対しても、「打ち上げたいのなら、どうぞご勝手に」という冷めた反応や、「ミサイル発射で市場の状況がさらに悪化するではないか」という不安の声、そして、「核やミサイルでドル札の束を燃やした」という現実の厳しい経済難を反映した愚痴も聞こえてくる。

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北朝鮮当局は、「米帝の植民地になり奴隷として生きるのか、苦しくても自主の道を選ぶのか」という理屈で、核とミサイルの正当性を訴えてきた。以前は、こうした主張がまかり通ったが、今では次のような声すら聞こえてくる。

「飢えた軍事大国より、腹いっぱい食べられる奴隷のほうがマシだ」

もちろん、自虐ジョークの類いだが、北朝鮮当局の宣伝に対する、ある種の「カウンター」とも言える。そもそも、北朝鮮の個々の国民は、決して洗脳などされておらず、権力を揶揄して、自分たちの境遇を笑い飛ばすユーモアをたっぷり持っている。

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いずれにせよ、市場を通じて資本主義に目覚めた今の北朝鮮住民たちに、思想的な締め付けは、もう通用しない。そして、北朝鮮の庶民達と地域の安定を望む国際社会の利益は、大きなところで一致しているということを忘れてはならない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記