批判に「虐殺」で答える北朝鮮の「残忍な身勝手さ」こそ問題だ

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安倍晋三首相は9日、オバマ米大統領、朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領と相次いで電話で協議。北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会で制裁決議の早期採択を目指すことで一致したという。

このように日米韓が連携を強めるのは、もちろん必要なことだ。しかし同様の協議は、これまでも数限りなく行われてきた。関係国はそろそろ、北朝鮮という国の本質を見ながら対策を講じるべき時にきている。

あの国の最大の問題は、独裁体制ならではの、残忍かつ身勝手な思考と行動方式にある。

いま、北朝鮮の国民はたいへんな困難の中に置かれている。国家はただでさえ慢性的な経済難の中にあるのに、無謀な核兵器開発などのために国際的な経済制裁さえ受けている。豊富な地下資源があるにもかかわらず、韓国や日本、米国などとの自由な貿易で外貨を稼ぐのもままならない。そのため、国内生産では足りない食糧を海外から十分に買ってくることさえできず、人々は飢餓の恐怖と隣り合わせの生活を強いられている。

これが日本などの民主主義国家であれば、国民は核兵器開発を強行した政権与党を選挙で敗北させ、国際社会との調和を重んじる新たな政府を誕生させるだろう。

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しかし、北朝鮮で政府批判などを行えば、軍隊に虐殺されるか、政治犯収容所で拷問され処刑されてしまう。

では、どうすれば良いのか。

想起して欲しいのは、抑圧されている北朝鮮の国民の利益と、地域の安定を望む周辺各国の人々の利益は、大きなところで一致しているということだ。

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厳しい経済難からの脱出を望んでいる北朝鮮の国民は、周辺各国との経済協力を何より望んでいるはずだ。核開発を放棄することで確実に経済協力を得られるとなれば、ほとんどの北朝鮮国民は賛成票を投じるだろう。

つまり、北朝鮮の暴走を止めたいならば、あの国の民主化を考えることは避けて通れないのだ。「そんなこと、現実的に可能なのか」と疑問視する向きもあるだろう。それでも、その可能性を探ることなしに、核問題やミサイル問題の根本的な解決は見えてこない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記