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ただ、こうした動きはまったく新しく生まれたわけでもない。そもそも中露と日米の安保利害は対立しており、ロシア国内からは、あからさまな北朝鮮擁護の声すら聞こえる。

(参考記事:北の核実験は「米国のせいだ」とロシアが主張する理由

北朝鮮とすれば、日米と中露の対立を浮き彫りにするほど「漁夫の利」を得られるわけで、核・ミサイル問題での「行動」も、あながち利益度外視の暴走とは言い切れない部分がある。

そして将来的に、北朝鮮の行動により最も大きな影響を受けそうなのは、新たな安保法制を整えた日本である。集団的自衛権の行使に踏み込む以上、米朝関係が緊張し、金正恩氏がより極端な挑発に走れば、自衛隊が北朝鮮の潜水艦を先制攻撃すべき状況も生まれかねない。

(参考記事:いずれ来る「自衛隊が北朝鮮の潜水艦を沈める日」

そうなれば当然、北朝鮮からの「核報復」のリスクも高まる。それに本格的に備えるためには、膨大なコストと時間を要する。日本政府は、ほとんど効果の見込めない独自制裁を検討するだけでなく、より長期的な視点で戦略を見直すべきだろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記