拉致され「妻」として与えられた女性たち…北朝鮮「人権侵害」の実態

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すでに知られているように、北朝鮮の拉致犯罪は、日本人に対してのみ行われたものではない。北朝鮮の拉致問題は、多国間の問題なのだ。「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)には、様々な国の人々の拉致被害の事例が詳細に述べられているし、同報告書に基づく国連決議もまた、そのすべての問題の解決を求めるものだ。

国連報告書は、次のように述べている。

拉致及び強制失踪の大部分が、朝鮮戦争及び 1959年に始まった在日朝鮮人の帰還事業に関連している。ただし 1960~1980年代に、韓国や日本、他の国々の数百人の人々も拉致及び強制失踪させられている。さらに近年では、北朝鮮は中国から多数の自国民と韓国人を拉致した。

北朝鮮は陸軍、海軍、諜報機関を拉致及び逮捕の実行に使った。作戦は最高指導者のレベルで承認された。被害者の大多数は北朝鮮の労働力及びその他国家のための技術力の獲得を目的として、強制的に失踪させられた。一部の被害者はスパイやテロ活動にも利用された。朝鮮人女性が異なる人種間の子供を生むようなことがないよう、ヨーロッパ、中東及びアジアから拉致された女性は他国の男性と強制的に結婚させられた。拉致被害者の女性の中には、性的搾取を受けた者もいる。

北朝鮮の体制が、朝鮮人女性が外国人男性との間でできた子供を産むのを嫌い、強制堕胎や乳児殺しまで行っている事実は、国連報告書の脱北者に関する部分でも指摘されている。

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(参考文献:国連報告書「脱北者に対する拷問・強姦・乳児殺しの実態」

その思考そのものが異常というべきものだが、海外に拉致工作員を派遣し、決して簡単ではなかろう作戦を決行してまで意思を貫徹するとは、その行動力には愕然とさせられる。

北朝鮮で行われている人権侵害はどれも酷いが、その中でも拉致問題は、あの体制の錯乱した思考の産物だと言える。

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どうして、そんなことをしたのか?――国際社会からのこうした問いにまともに答えられないために、北朝鮮は人権問題からいっそう目を背けているようにも思える。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記