赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「人権侵害」の実態

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「母とその子は収容所内の懲罰棟に連行され、赤子は犬のエサの器に投げ込まれた」

この、にわかには信じがたい衝撃的な話は、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)に収められた証言の一部だ。国連総会はこの報告書に基づき、北朝鮮における人権侵害の責任追及を求める決議を今年も採択した。

上記の証言の主は、政治犯収容所で看守として働いた経歴のある脱北者、アン・ミョンチョル氏だ。国連報告書の政治犯収容所に関する部分には、アン氏の証言が数多く収められている。

(参考文献:国連報告書「政治犯収容所などでの拷問・強姦・公開処刑」

もっとも、COIはその内容について完全に裏付けを取っているわけではないので、誇張が含まれている可能性は排除できない。

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過去には、政治犯収容所の出身者が、自身の証言の一部が「事実でない」と認めたケースもあった。

だが、COIが裏付けの足りないまま報告書をまとめるに至ったのは、北朝鮮が調査への協力を全面的に拒否したからに他ならない。かくも重要な問題について協力を拒否すれば、巨大な不利益を被るであろうことは誰にでもわかる。それを甘受してでも隠したい秘密を、金正恩体制は持っているということだ。北朝鮮当局は最近においても、脱北した収容所出身者の追跡に血道を上げていると伝えられている。

いずれにしても、拷問や強姦、公開処刑が日常的に行われる政治犯収容所は、北朝鮮国民にとって恐怖の象徴だ。さらに、多くの人が「罪状」すら知らされないまま連行されている事実が、人々の恐怖心を倍加させている。国連報告書は次のように述べている。

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政治犯罪の被疑者は夜間に路上や職場で逮捕されて抑留施設に連行されることがしばしばである。取り調べの内容により逮捕理由が推測できるのみであること少なくない。

アン・ミョンチョル氏は、自分が政治犯収容所で長年の労働に服していた間に話をした収容者のほとんどは逮捕理由を知らなかったと証言した。「彼らの話によれば、ある夜、就寝中に突然[国家安全保衛部担当官が]家にやってきて逮捕された…収容者たちは悪い人間だと教えられた。しかし、これらの人たちは、自分がなぜそこにいるか理解していないことを知った。」

このようにして連行された人々は、どのような目に遭わされているのか。その詳細については次の回で述べる。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記