凄惨な拷問と人身売買…北朝鮮「人権侵害」の実態

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国連は、儒教的で男性本位な北朝鮮社会において、女性の人権が著しく傷つけられていることを問題視している。先般の国連決議の基盤となっている「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書(以下、国連報告書)は、北朝鮮における女性の人権状況と関連し「女性や少女は人身売買の被害を受けやすく、また、性的取引及び売春への従事が増加している」と指摘している。

北朝鮮国内ですらそうなのだから、中国で不法入国者とみなされ、強制送還の恐怖に怯える脱北女性たちはなおさらだ。何ら法の保護を受けられない彼女らは、人身売買の格好の標的となっている。

一方、中国での潜伏生活の糧を得るため、あるいは自分や家族をかくまってくれる脱北ブローカーへの報酬を払うために、仕方なく売春に従事する女性も多い。中国当局により強制送還されれば、北朝鮮ではいっそう過酷な運命が待っているからだ。

脱北者が送還されたら、北朝鮮でどんな目に遭わされるのか。国連報告書は次のように述べている。

送還された人たちの運命は国家安全保衛部によって、決定される。大韓民国国民やキリスト教徒と接触したと見受けられた人たちは、地方の国家安全保衛部本部へさらなる尋問のため、送られる。そこから、彼らは裁判もなしに、政治犯収容所(「管理所」)へ直接送られるか、普通の刑務所(「教化所」)に投獄されるかのどちらかである。特に重大であると考えられる場合には、たとえば、大韓民国の情報当局者と接触した場合は、その犠牲者は処刑に直面する。

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逆に、ただ食糧や仕事を探しに中国へ行ったと見受けられる人たちは、人民保安省に引き渡される。そこで、通常、尋問が再び始められる。もし、人民保安省がその人は普通の国境横断者であると確認すれば、拘留所(「尋問拘留所」)に留置となる。そこで、拘留され続け、時には数ヶ月になり、その人の故郷の人民保安部員が引き取りにくるまで、拘留したままにする。普通は裁判もなく、数ヶ月から1年、労働訓練所(「労働鍛練隊」)にその犠牲者を留め置く。

拘留され尋問を受けている間、脱北者らは様々な拷問を受ける。殴られるだけでなく、女性らは強姦に等しい屈辱的な行為を受け、強制堕胎や乳児殺しも行われる。

しかし、これほどの恐怖で威嚇しているにもかかわらず、中朝国境を越える人々は決していなくならない。単に生きるための逃亡のみならず、モノや情報が運ばれ、それは確実に北朝鮮社会に「自由」の息吹を吹き込んでいる。

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脱北者の境遇に目を向けずして、北朝鮮の変化は望むことができないのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記