「行方不明者の捜索中だった10月下旬、ある女性の遺体が発見された。すぐそばには、女性の子どもを抱いたまま亡くなった、祖母と思われる老婆の遺体もあった。女性の懐からは、ビニールでぐるぐる巻きにした肖像画が発見された」
「自分の子どもの命よりも肖像画を守ることを優先した」女性の話は街全体に広がり、住民に衝撃を与えた。国の配給システムや無償医療制度が崩壊した今、北朝鮮住民の国や指導者に対する忠誠心はかつてなく弱まっている。住民たちは、口には出さないが「気の毒だけど、何もそこまでしなくても…」という目で見つめているようだ。
北朝鮮では「首領の権威を命をかけて守らなければならない」「火災や水害の際には、肖像画をいの一番で守らなければならない」との教育がなされており、守りきれなかった場合には「人民の義務を捨てた」として処罰の対象となりうる。
この女性も処罰を恐れて肖像画を守ろうとしたようだが、同様の理由で犠牲になった人が多数発見された話を聞いた情報筋は「偶像化教育を恐ろしさを改めて感じた」と述べた。