それにもかかわらず正恩氏は、その後1年の間に、さらに新たな追及材料を提供した。側近である玄永哲元人民武力相を、大口径の高射砲で文字通り「ミンチ」にして処刑。これが世界的ニュースとなったのだ。また、昨年10月に行われた公開処刑については、その場面が衛星画像で確認されている。
こうした処刑を関係者や民衆に無理やり見せて、恐怖心でコントロールしようとするやり方は、武装勢力「イスラム国」(IS)の所業と本質的に変わらない。ちなみにネット上では、ISが捕虜をバラバラに吹き飛ばして処刑した動画について、「北朝鮮から流出したものだ」と噂されたこともあった。
ただ、北朝鮮の公開処刑の残虐さは広く知られるようになったものの、それがどのようなプロセスで行われるかはほとんど情報が共有されていない。公開処刑が民衆を操る手段である以上、北朝鮮の人権侵害の本質を見極めるには、そのプロセスや仕組みについて知るのは必要不可欠な取り組みである。
米国のニュースサイト「NKニュース」は、かつて北朝鮮で公開処刑に関わった人物の証言も交え、そのプロセスについて解説している。この人物の証言によれば、「死刑囚は鬼の形相で息絶えていた」というが、言われなく死に追い込まれた人々の怨念の深さを思い知らされる。