国政監査で明かされた特戦司や空軍の計画も、あるいは「斬首作戦」の一環ではないのか。ちなみに、韓国映画「シルミド」で描かれた北派工作員たちは、実在した韓国空軍所属の部隊をモデルにしたものだが、その伝統を受け継ぐのが特戦司である。韓国軍は1万人もの特殊部隊員を北朝鮮に潜入させた歴史があり、金正恩氏に対する「斬首」も絵空事とは言えない。
もっとも、北朝鮮側が容易い相手でないのはもちろんだ。北朝鮮が、核施設の防御力を試すために自ら行った演習では、施設への接近を試みた50の精鋭部隊が防衛隊により全滅させられたという。
いずれにせよ、金正恩氏の登場以来、朝鮮半島情勢はきな臭さを増している。安保法制が成立し、朝鮮半島有事で米軍と行動をともにするとの誓いを立てた日本は、朝鮮半島の軍事動向をいっそう注視すべきだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。