そうしたこともあり、韓国側では当初、北朝鮮が兵士の脱北防止のために地雷を埋設しているものと見ていたフシがあるのだが、今回の出来事により、事態は一転して南北の対決モードに突入してしまった。
韓国軍は、北朝鮮の地雷が爆発し、兵士らの身体が吹き飛ばされる瞬間の動画を公開している。仲間が傷つけられる場面を見た将兵の中には、強い復讐心を抱く者も少なくないだろう。
韓国軍は報復措置として、軍事境界線付近での拡声器による心理戦「対北朝鮮拡声器放送」を11年ぶりに再開すると発表している。北朝鮮は、こうした放送に対して「最高尊厳に対する冒涜」「反共和国謀略戦」などと警戒しており、2004年6月の南北合意で中断されていた。
放送が再開されれば、北朝鮮が何らかの「再報復」に動く可能性は低くない。
報復の連鎖が、さらなるエスカレーションにつながることが懸念される。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。