その最大の理由は、大量の餓死者を出した経済難だろう。しかし同じ時期、女子柔道のケー・スンヒ、女子マラソンのチョン・ソンオクらが大活躍していたことを見れば、北朝鮮サッカーの「不在」をまったく経済難だけのせいにすることはできない。
結論を言ってしまうなら、経済難を背景とした不正腐敗の蔓延が、北朝鮮サッカーの実力を蝕んでいたのだ。
たとえば90年代半ば、強豪として知られる朝鮮人民軍傘下の「4・25体育団」は、軍の戦闘用通信システムまで動員した大規模な八百長に手を染めていたという。また、選手選抜では本人の実力より、親の財力を基準に決めていた。それもこれも経済難の中で、チームの維持に必要な物資を確保するためだったという。