また、北朝鮮の李洙墉(リ・スヨン)外相が最近、アフリカの友好国を歴訪し、赤道ギニアやナミビアを訪れた。ナミビアには北朝鮮の武器商社の要員が常駐しており、「秘密裏に弾薬工場を建設している」との情報もある。
このようにアフリカには、北朝鮮と軍事的に深く結びついた国が多く、国連の制裁決議も「どこ吹く風」だ。第4次中東戦争の際に北朝鮮が空軍パイロットの「助っ人」を送ったエジプトも、国連制裁に協力的とは言えない。
北朝鮮とアフリカ諸国の関係の深さをうかがい知るエピソードがある。ある韓国人がビジネスでアフリカ某国を訪れたところ、相手のアフリカ人から「金日成(キム・イルソン)将軍」の話題を持ち出された。さほど韓国と関係の深くないアフリカ人の中には、「コリア(korea)といえば金日成」という強烈なイメージを持つ人もおり、そのことに当の韓国人はショックを受けたという。
それにしても、北朝鮮のアフリカ・ビジネスと言えば、従来は武器取引や、独裁者のための豪華な宮殿や銅像の建設と相場が決まっていた。
北朝鮮が赤道ギニアを足場に、今後どのようなITビジネスを展開するのかが気になる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面日本ではこうした情報を主要メディアがまったく報じず、日米韓が対北制裁を行えば北朝鮮がいずれ音を上げるかのようにミスリードしがちだが、実態は大きく異なる。北朝鮮に圧力を効果的に加えたいのなら、中東やアフリカでの動向に関する情報の精査も必要だろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。