「北朝鮮ではマツタケがよく採れるのですが、現地の人々の間ではあまり人気がない。私の親戚も『あんなものどこがウマイんだ?』と言っていました。だから国内ではほとんど消費されず、日本への輸出に振り向けられていたんですね。でも、私たち日本育ちの人間にとっては訪朝時の“おたのしみ”のひとつだった」
在日朝鮮人の親族訪問団は、新潟港と元山(ウォンサン)港をつなぐ貨客船「万景峰(マンギョンボン)」号で行き来するのがメインルートだった。日本に戻る際には元山の「東海苑」という食堂に立ち寄り、焼肉やマツタケを食べながら一杯やるのがお決まりのコースだったという。
男性が続ける。