一方で、こうした統制の裏側では、特権層による韓流コンテンツの享受が以前から指摘されてきた。国外情報に接しやすい幹部たちの間では、禁制品とされる映像作品が密かに流通しているとの証言もある。一般住民に厳格な規制を課す一方で、上層部が例外的にそれらを楽しんでいるとすれば、体制の二重基準を示すものといえる。
膨大な人々を粛清
こうした中、過去の権力中枢に関する興味深い証言もある。北朝鮮情勢に詳しい関係者によれば、韓国の情報機関がかつて通信傍受したとされる内容の中で、故張成沢(チャン・ソンテク)氏が、処刑される約1年前に「正恩が食事も取らず夜も眠らず、あんなモノにハマっている」と周囲に語っていたとされる。この「あんなモノ」が韓国ドラマだったという。
(参考記事:「一家が跡形もなく消えた」北朝鮮”赤い貴族”の許されざる罪)張氏はかつて体制ナンバー2と目される実力者だったが、2013年に「反党・反革命行為」などの罪で失脚し、公開の場で拘束された後、国家転覆を図ったとして処刑された。その過程は異例の速さと公開性を伴い、張氏につながる膨大な人々が粛清され、権力基盤の強化を急ぐ指導部の姿勢を内外に印象付けた。
(参考記事:【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された)
張氏が処刑された背景については謎も多いが、金正恩氏が自分を見下したような張氏の態度、その権勢を嫌っていたというのが定説だ。
