北朝鮮は10日、イランで新たな最高指導者が選出されたことについて、「自分らの最高指導者を選出するイラン人民の権利と選択を尊重する」と表明し、米国とイスラエルによる内政干渉を非難した。しかし、このメッセージは外務省報道官が通信社の質問に答える形で出されたもので、決して強い調子のものとは言えない。情勢の重大さを考えれば、北朝鮮が慎重な姿勢を取っていることは明らかだろう。
振り返れば、北朝鮮は過去にイスラエルと直接対峙した経験を持つ。1973年の第四次中東戦争では、北朝鮮はアラブ諸国を支援するため戦闘機部隊を派遣し、シリア側で実戦任務に参加した。冷戦期の国際政治の中で、北朝鮮は「反イスラエル陣営」の一員として軍事行動に踏み込んでいたのである。しかし、イスラエルの軍事力がどれほど恐るべきものかを、北朝鮮が身をもって思い知らされた出来事もある。2007年、イスラエル空軍はシリア北東部の秘密核施設を空爆し、これを完全に破壊した。
完成直前に標的となったアル・キバル原子炉の建設には、北朝鮮の技術者が深く関与していたことが広く指摘されている。北朝鮮は自国の核開発で培った技術を提供し、原子炉建設を主導していたとみられる。
さらに、この施設をめぐっては資金の一部をイランが拠出していたとの見方もある。欧米の研究者や情報機関関係者の間では、イランの革命防衛隊関係者の証言などを根拠に、イランが北朝鮮に巨額の資金を支払い、シリアの核計画を支援していた可能性が指摘されてきた。イスラエル側の推計では、その額は10億~20億ドルに達したとの説もある。すなわち、この施設は北朝鮮の技術、シリアの土地、そしてイランの資金が結びついた「三国協力」の産物だった可能性すらある。
しかし、イスラエル空軍はこの施設を一夜にして破壊した。高度な情報収集能力と精密打撃能力を駆使し、シリアの防空網を突破して施設を完全に無力化したのである。北朝鮮が関与した国家機密級のプロジェクトが、イスラエルによって事実上「消し去られた」瞬間だった。
(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘)
この出来事は、北朝鮮にとって単なる中東の事件ではない。自国の核技術ネットワークがイスラエルの情報力と軍事力の前で丸裸にされた経験でもあった。イスラエルが核関連施設への先制攻撃を辞さない国家であることを、平壌は身をもって思い知らされたのである。
現在、中東では米国とイスラエルがイランに対して強硬姿勢を強めている。北朝鮮がイランを擁護する発言を出したとはいえ、その語調が控えめなのは偶然ではないだろう。北朝鮮はイスラエルと戦ったことがある国であり、同時にその恐ろしさを知る国でもある。その記憶が、今回の発言の慎重さの背景にあるのかもしれない。
