現在は「偏愛」にも映る父娘関係が、永続する保証はない。絶対的権力が集中する体制において、血縁は忠誠を約束する一方、最も苛烈な対立を生む種にもなり得る。
(参考記事:金正恩から娘ジュエへの「権力継承」が失敗しそうな三つの理由)その最も分かりやすい前例が、ほかならぬ金正恩氏自身だ。彼は祖父・金日成主席、父・金正日総書記という巨大な権威の継承者として登場した。
しかし近年、北朝鮮の公式言説や象徴空間から、祖父や父の存在感は相対的に後景へと退きつつある。代わって強調されるのは、「金正恩時代」の業績と指導力だ。白頭の血統を土台にしつつも、最終的には自らの権威を前面に押し出す――それが金正恩流の権力確立だった。
蛙の子は蛙である。もしジュエ氏が将来、「センターは自分だ」という自意識を強く持つようになれば、父が歩んだ道をなぞる可能性は否定できない。
そのとき、父娘の関係は「継承」という美名のもとに保たれるのか、それとも権威の主導権を巡る緊張関係へと変質するのか。錦繡山で示された華やかな構図の裏には、金王朝がいずれ直面するであろう、避けがたい権力の力学が静かに潜んでいる。
