同じ地域の別の情報筋は、道内の工業、企業所は農村支援動員期間中に宴会や飲み会が開かれないように、従業員への統制を強化していると伝えた。

情報筋は、「農村支援や緊急動員に赴く際には、絶対に酒を持参しないよう、工場の幹部は繰り返し念押ししている」と述べた。今月初旬には、支配人自らが、昼食時に従業員の荷物を検査する場面もあった。酒の持ち込みを防ぐのが目的だった。

朝鮮の農村では昔から「セチャム」と言って、仕事の手を休めて木陰に座り、軽い食事を取りつつマッコリを飲んで休憩していた。それが今でも残っており、従業員自らが酒を持っていくのが慣例となっている。場合によっては工場側が酒を支給することもある。

情報筋は、「これまでは、田植え戦闘や社会動員に行った際、昼食時や作業後に酒を1〜2杯飲むのが日常だった」と語った。つらい労働に耐えるための習慣だったが、それも禁じられた今、作業効率が下がっていると不満を漏らした。

このように、幹部への締め付け強化は、一般庶民にも影響を及ぼす。情報筋は、「幹部が追い詰められれば、その数倍の負担が末端の労働者にのしかかる」と語った。

(参考記事:金正恩「軍幹部14人を迫撃砲で処刑」またも恐怖の飲み会禁止令

北朝鮮当局は、飲んで食べて歌って踊って騒ぐことを「スルプン(酒風)」と名付けて毛嫌いし、これは反社会主義的行為であり、国や社会を崩壊させかねないとして、取り締まりを行っている。

故金正日総書記は「党的にスルプンを徹底的になくすことについて」という指示を出し、違反者を思想闘争(吊し上げ)にするなどの取り締まりを行った。金正恩氏に至っては、宴会を開いたからという理由で軍幹部を銃殺刑にしたほどだ。しかし、娯楽の選択肢が乏しい社会であるため、こうした取り締まりの効果は限定的だった。