国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)と、韓国のNGOの転換期正義ワーキンググループ(TJWG)は今月5日、「新型コロナ関連の抑圧の実態に関する脱北者の証言」という報告書を公開した。これは、2020年から2023年の間に脱北した3人の男性と5人の女性と行った面接調査に基づくものだ。
証言によれば、北朝鮮当局はコロナ禍の中、公開処刑で恐怖を煽り、統制を強化した。それにより、既にひどかった人権状況がさらに悪化したと両団体は指摘した。非公式な越境や国内移動、無許可の海外メディアへのアクセスなど、それまでは比較的軽い罪とされていたものを、重罰化した。
2020年に制定した「反動思想文化排撃法」は、韓流コンテンツをターゲットにしたものだが、これを根拠に、K-POPや韓国映画を回し見したとの理由で銃殺された人もいた。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)極刑にまではせずとも、北朝鮮当局は様々な方法で人々の恐怖を煽った。
原道(カンウォンド)の元山(ウォンサン)師範大学では年2023年6月、一度に60人もの女子大生が「見せしめ」に吊し上げられた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面大学では6月19日、道内の大学生全員を集めた上で、同年上半期の反社会主義・非社会主義行為に対する公開闘争と公開裁判が行われた。そこでは、反動思想文化排撃法などに違反した60人の女子大生が、20人ずつ壇上に立たされた。そして「罪状」が読み上げられた上で、次のような批判を徹底的に浴びせかけられた。
「駭怪罔則(奇妙でけしからん)な行為を行った者ども、ろくでもない行為をやらかした者ども、浮華放蕩(浮かれて贅沢三昧)な行為を行い続けた者どもなど、醜悪な面構えをした者どもが、社会を汚染している」
中でも1人の学生に対しては、罪状が非常に重いとして、無期労働教化刑(無期懲役刑)が言い渡された。3人には有期の労働教化刑、2人には労働鍛錬刑が言い渡された。たとえ有期刑であっても、環境の劣悪な北朝鮮の教化所(刑務所)から五体満足で出てくるのは非常に難しく、緩慢な処刑と言っても過言ではない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
またこれより軽微な懲罰で済んでも、それで終わりではない。朝鮮労働党への入党の道はほぼ閉ざされ、就職や昇進で著しい不利益を被る。それが結婚にも悪影響を与えるのは必至で、仮に農村へ行かなければならなくなれば、都市への復帰すら不可能になる。
しかし、当局がここまでしても、韓流の視聴は完全にはなくせなかった。北朝鮮当局の強硬姿勢は、彼らが不利な戦いを強いられていることの証左でもある。