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昨日まで普通に暮らしていた友人や隣人が、前触れもなく姿を消す――日本でもままあることだ。警察庁の統計によると、2023年の1年間で行方不明となった人は、届け出があっただけでも9万144人だ。認知症による行方不明者数を含めると、その数は11万人近い。

理由として最も多いのが疾病によるもので、以降は家庭の問題、事業・職業、学業、異性関係と続き、犯罪と関連があるものは全体の1%にも満たない。

一方、北朝鮮は事情がまったく異なる。国家が厳しく統制しているため、国民には「行方不明になる自由」もない。それなのに姿が見えなくなれば、それ自体が事件なのだ。

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で、そこそこ裕福な暮らしをしていた一家4人が忽然と姿を消す事件が起き、地域住民は恐怖に震えている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

恵山(ヘサン)市の渭淵洞(ウィヨンドン)に住んでいたこの一家が今月初旬のある日の夜に忽然と姿を消し、町内は騒然となった。

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一家はトンジュ、いわゆる新興富裕層で、経済難の続く今の北朝鮮でも比較的余裕のある暮らしをしていた。一家は、近くを流れる鴨緑江を渡り、対岸の中国に逃げ込んだのではないかというのがもっぱらの噂だ。

彼らが消えた理由として、こんな噂が流れている。

「中国(キャリア)の携帯電話を使って、国内情報を(国外に)売り飛ばして得たカネで豊かな暮らしをしていたことが問題になった」(情報筋)

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(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

北朝鮮の携帯電話は、モバイル通信ができても海外につながるインターネットにはアクセスできず、国内のウェブサイトしか見られない仕様の「ガラパゴス携帯」となっているが、中国の携帯電話会社のものなら、多少の制限はあっても国内外と自由にやり取りできる。もちろん、韓国にいる人とのやり取りも当たり前のようにできてしまう。

体制を脅かしかねない非公式の情報流出と流入につ神経を尖らせている金正恩総書記は、これら携帯電話の摘発を繰り返し命じ、最近は再び取り締まりが強化されていた。

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「かつては取り締まりにひっかかっても、幹部とのコネやワイロで揉み消すこともできたが、今は保衛部(秘密警察)が中国の携帯電話の使用を根絶すると騒ぎ立てており、摘発されれば法律に則って処理する空気だ」(情報筋)

消えた一家は本当に脱北したのか。同時に囁かれているのは、夜中に保衛部に踏み込まれて、連行された可能性だ。行き先は管理所(政治犯収容所)だろう。そうなれば、二度と戻ってくることはない。一夜にして4人家族が全滅したも同然なのだ。

(参考資料:泣き叫ぶ家族を白昼に連行…北朝鮮で「最も残酷な光景」

当局からの発表がない以上、いずれのケースかは不明だが、市民の間では恐怖が広がっている。中でも、中国の携帯電話を使ってビジネスをしている人たちは、おとなしくして嵐が過ぎ去るのを待っている。保衛部は、これらの人々の所在を概ね把握していることから、その匙加減一つで、いつ捕まるかわからないのだ。

市民の間では、こんな話が交わされている。

「中国の携帯電話を持って余裕のある生活をしている人たちを、羨ましがるものではない」
「いい暮らしをしていた人たちが突然姿を消すのを見ると、まともに食えない貧乏生活の方がマシだ」
「欲張らずに、(朝鮮労働)党の言いつけを聞いて、言われたとおりに生きるのが安全だ」

一家が脱北に成功し、無事であることを願うが、中国に行ったとていつ逮捕されるかわからず、怯えながら暮らしていることだろう。