地元の南浦市民からも疑問の声が上がっている。

「今回の事件を詳しく知っている地元民は、地方工場の建設が終わり、幹部が打ち上げをしただけなのに、それが摘発されただけで、中央が言うような特大事件ではないと口々に語っている」(情報筋)

慈江道からも同様の声が上がっている。

「雩時郡事件について知っている人たちは、雩時郡地方工業工場建設に必要な資材と資金をかき集めようとして問題になっただけで、私腹を肥やしたわけではない、これほどの事件になるほどのことではない」(情報筋)

金正恩総書記が問題を提起し、腐敗した幹部を次々に血祭りにあげ、国民から支持を得ようとしたが、期待とは異なり「やり過ぎ」だと批判されることとなった。また、「地方発展20✕10政策」がうまくいかない責任を、地方の幹部になすりつけようとしているのではないかとの疑問を持たれてしまった。

(参考記事:「生かさず殺さず」の経済システムで瘦せ細る北朝鮮の中間層

なし崩し的に進んでしまった市場経済化にブレーキを掛け、旧来の中央集権型計画経済に戻すための目玉政策の一つだった地方発展20✕10政策だが、適切に資材が供給されないなど、失敗が予見されていた。また、対象となった地域の住民の評判も悪い。

もしかすると、このような世論が、温泉郡の幹部の命を救うかもしれない。