そんな現地の重苦しい空気を知ってか知らずか、中央からは、旧正月のお祝いムードを盛り上げよと的外れな指示を下した。町内の掲示板に芸術作品を展示せよだとか、様々な展示会、音楽会、運動会を行えだとか、事細かく注文したという。

市内中心部にそびえ立つ故金日成主席、故金正日総書記の銅像の前の通りでは、恵山市機動芸術宣伝隊と学生少年芸術宣伝隊が、ラッパを吹いている。朝夕には出退勤で通りかかる人がいるが、昼間には全くひとけがなく、いずれも虚空に向けてラッパの音を響かせている。

平壌の国家保衛省は今回の検閲に、エリート養成機関の国家保衛政治大学の学生200人を派遣した。そこに加えて、両江道保衛局、市や郡の保衛部の予審課、捜査課の担当者も検閲に当たっている。

金正恩氏は、体制を揺るがしかねない情報や品物が国境を超えて中国から入ってくると考え、中でも両江道が最もひどい無法地帯だと考えているようだ。それで、大々的な検閲を行い、旧正月を台無しにした。経済に与える影響も少なくない。一連の検閲は、今後全国を対象に、順次行われるとのことだ。