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北朝鮮の金正恩総書記は、もしかしたら韓国の「弾劾情勢」よりも、政権崩壊後のシリアの今後が気になっているかもしれない。

シリアでは、政治犯を収容していた首都ダマスカス郊外のサイドナヤ刑務所が解放され、その残酷な実態が明らかになりつつある。同刑務所では、3万人以上が処刑や拷問などで殺害されたとの指摘もあり、新政府が人道犯罪への追及を強めるのは明らかだ。

一方、北朝鮮の政治犯収容所である「管理所」は、施設の規模でも犠牲者の数においても、これよりはるかに大掛かりだ。金正恩体制の追従者の中には、シリア情勢を見ながら背筋が寒くなる向きも多いはずだ。

だからこそ、北朝鮮当局は国内統制を強めている。そんな環境下では、発言ひとつが命取りになる。

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今年7月にも、2人の官僚が処刑された。そしてその手順は、前例のないものだった。

デイリーNK内部情報筋によれば、同月13日、中央反社会主義・非社会主義(以下、反社非社)連合指揮部は平壌市と黄海北道(ファンヘブクト)で同日・同時刻に非公開裁判を行い、被告の計2名に死刑を宣告した。

情報筋によると、被告となったのは平壌市国家観光総局の職員と、黄海北道新渓郡山林経営所の職員で、いずれも韓国映画とドラマ、歌を流布して問題視された。

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彼らは、周辺住民の通報と、予審での自白をもとに、単に韓国の文化を消費したのではなく、敵対国の思想を受け入れた反国家的行為を働いたとして、法定最高刑を言い渡されたという。

情報筋によれば、彼らは韓流コンテンツを密売していただけでなく、北朝鮮と資本主義国家とを比べながら、「わが国は我々を騙して奴隷にしている」「こんな国に生まれたのが運のつきだ」などと不満を表していたとのことで、こうした言動も含めて「反国家行為者」と見なされた。もしかしたら単なる「愚痴」の類だったのかもしれないが、それでも北朝鮮では死に値する罪となるのである。

異例だったのは、異なる場所で同時に非公開裁判を行ったという点だ。北朝鮮は従来、公開裁判や公開処刑により、見る人々に恐怖を与える手法を多用してきた。

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それがこの件で非公開になったのは、被告らの「反体制的」な言動が、国民に刺激を与えるのを恐れたのかもしれない。その一方で「同時裁判」という異例なやり方は口コミで広まり、人々に心理的圧迫となるかもしれない。

しかし、どのように手法を変えて見たところで、やっていることの本質は変わらない。シリアのように「その時」がくれば、暴かれるべき事実は、暴かれるのだ。