恵山(ヘサン)でゼリーを製造販売している50代の女性は、自宅を訪ねてきた安全員を怒鳴りつけて食って掛かった。
「すぐに出ていけ!ゼリーを良心的に作って売って生きているが、お前は私の生活を助けてくれたことがあるのか!」
個人業者が製造する食品を買っているのは安全員とて同じだ。ガンガン取り締まると市場で何も買えなくなってしまう。だから、ワイロと引き換えに黙認するのだという。
「安全員もワイロさえ受け取れば、個人が何を作って売ろうと見て見ぬ振りをする。結局、このような取り締まりなどやってもやらなくても同じ。いつもくたびれさせられるのは一般庶民だ」(情報筋)
かつて「猫の角以外何でもある」と言われた北朝鮮の市場だが、計画経済回帰策で儲けの大きい電化製品、加工食品、穀物など多くの製品の販売が禁じられた。残ったのは、自宅の裏の畑で作った野菜や、食品だけだ。北朝鮮国民の多くが、現金収入を市場から得ている現状で、資本主義の萌芽を完全に摘み取ろうとする金正恩氏の政策は、国民を飢餓と貧困に追い込む結果ばかり生んでいる。