これもすべて、密輸や脱北ができなくなったことが原因だ。
「密輸が活発だったころ、国境警備隊は儲かっていて兵役中に結婚の準備までできたが、今は密輸ができず、食べ物も物資も不足していて、空腹に耐えかねて脱走する事件が繰り返されている」(情報筋)
密輸や脱北という違法行為への加担が常態化していた過去30年が異常な状態だったわけだが、そのおかげで隊員はまともな暮らしをして、地域経済も潤い、両江道の国境地帯は、北朝鮮国内でも有数の豊かな地域だった。
しかし、これを問題と見た金正恩総書記は、コロナ禍の国境警備の強化をきっかけに、過去30年の状況を一変させ、国境を固く閉じてしまった。また、国がすべての貿易を管理するようになり、合法的な貿易すらかなり困難になってしまった。
地域に残されたのは「貧困」と「飢餓」だけだった。