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1950年6月25日午前4時、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の10万の兵力が、北緯38度線を越えて韓国になだれ込んだ。それから3日後の28日午前1時、郊外の彌阿里(ミアリ)峠を越え、ソウル市内に侵入し、陥落させた。わずか70時間あまりのことだった。

ところが、北朝鮮は「韓国軍と米軍、国連軍に侵略されたが、それを跳ね返した上で、逆にソウルまで占領した」とする「北侵説」を主張している。これに沿った映画『72時間』が今春、公開され人気を博したが、最近になって急に上映が禁止されたという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、映画は朝鮮労働党中央委員会扇動宣伝部の指示で制作され、今年2月に公開された。人民軍と国軍(韓国軍)の激しい戦闘シーンは、見た者に韓国に対する敵愾心を抱かせ、観客の中には「最高司令官(故金日成主席)の意図どおりに進撃していれば南全体を占領できたはず」との感想を述べた人もいたという。

最近の北朝鮮映画はつまらないものばかりで、すっかり韓国やほかの外国映画に人気を奪われていたが、『72時間』は久々の大ヒットとなった。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、当局はテレビでの放映をさせず、映画館だけで上映させている。当初は18000北朝鮮ウォン(約200円)だったチケットは、5000北朝鮮ウォン(約55円)に値下げされた。商業的な意味もあるだろうが、久々の大ヒット映画となり、当局の意図どおりに「韓国への敵愾心を煽る」という目的が達成できているからだろう。

ところが、平安北道の情報筋によると、当局は映画館で携帯電話での録画、撮影を禁止する措置を取った。金日成氏や金正恩総書記の映像を勝手に持ち出すのはまかりならんというのが、その表向きの理由だ。上述の通り、映画館だけでの上映が認められていたが、大人気映画だけあって、韓国映画などと同様に、ファイルをUSBメモリに保存して流通させる者が現れていた。

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そればかりか、映画の上映そのものを禁止する命令も下された。この命令は、金正恩氏が批准したものだとのことだ。「観客が意図せぬ受け止め方をするようになってきた」というのがその理由のようだ。

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「映画ではわが軍(朝鮮人民軍)が、1950年6月25日に戦車部隊を先頭に南に進軍する内容だが、わが国(北朝鮮)が戦争の導火線に火を付けたと思わせかねない。また、3日でソウルを占領した軍の指揮官たちが、その成果に酔い、さらに南に進撃せず、南全体を占領する機会を逃したとの印象を与えかねない」(情報筋)

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朝鮮人民軍はソウルを占領してから3日間、進撃を止めてソウルに留まった。これについては、「ソウル市民が韓国政府を追い出すために武装蜂起するものだとばかり思い込んでいた」「スターリンと毛沢東の承認を得るまで時間がかかった」などを様々な説があるが、真相はよくわかっていない。この3日間は、韓国軍にソウル南方に陣地を築く余裕を与えてしまった。

また、一部の観客からは「もしわれわれが南を占領していれば、今の韓国はどうなっていただろうか」との感想を漏れるようになったという。豊かな韓国は存在せず、自分たちと同じような貧しい国になっていたのかもしれないということだ。