深夜のソウル郊外に警報が鳴り響き、市民は肝を冷やした。
28日午後11時34分、ソウル郊外の13の市・郡のすべての携帯電話に、警報音と共に以下のようなエリアメールが届いた。
危急災害メール
北朝鮮の対韓国伝単(ビラ)と思われる未詳の物体が感知された。野外での活動を控え、見つけた場合には軍部隊に通報せよ。Air raid Preliminary warning 【京畿道】
“Air raid Preliminary warning”(空襲予備警報、警戒警報)という英語の一文は、恐怖心を助長した。韓国語のわからない外国人はこれを見て肝を冷やし、X(旧Twitter)に「本当にミサイルか爆弾かと思った」「今日は寝ても大丈夫?」などといった投稿が相次いだ。
韓国軍当局によると、北朝鮮が飛ばしたものと思われる風船100個以上が発見された。韓国の通信社聯合ニュースは、糞便と思われる汚物が袋に入って風船に吊るされていたと報じた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮国防省のキム・ガンイル次官は25日に発表した談話で、「国境地域での頻繁なビラとごみ散布行為に対してもやはり真っ向から対応する」と予告していた。今回の行為は、脱北者団体の対北ビラ散布に対する報復だということだ。
しかしそれにしても、汚物を飛ばすとは。韓国と北朝鮮は朝鮮戦争(1950年~53年)の時以来、政府当局や民間団体がビラの散布合戦を繰り広げてきたが、かつてのモノは、それなりに品を保っていた。
北朝鮮は、韓国に経済力で勝っていた1960年代から70年代にかけて、自国は「民衆中心の国」であり「医療費も要らず公害のない民衆が住み良い社会」であると宣伝し、金日成主席の偉大さをアピールしたビラは、一部の韓国国民に対してそれなりの説得力を持ったかもしれない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、韓国が高度経済成長を経て豊かになるにつれ、ビラを通じた宣伝力でも自ずと差が付き始めた。韓国当局は1980年代、水着姿の美人タレントらの「悩殺写真」を刷ったビラを前線の北朝鮮兵士めがけて散布し、脱走と亡命を促した。
(参考記事:【写真】水着美女の「悩殺写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目)
こうしたグラビアの類は、北朝鮮社会では決してお目にかかることの出来ないシロモノだ。洗練された韓国美女の水着写真を見た18、19歳の北朝鮮兵士が、どれほどの衝撃を受けたかは想像に難くない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮が韓国に汚物を飛ばすのは、すでに自国の「優位性」を誇るネタもなく、嫌がらせしかできなくなったことを自ら認めているに等しいと言えるだろう。