北朝鮮が幹部に「妻のしつけ」を命令…「家族革命化」の旧態依然

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北朝鮮の道路安全法には、飲酒運転を禁じる条項がない。一方で、道路安全規定には運転中の飲酒、喫煙、雑談を禁じる条項がある。しかし、飲酒の定義は決められておらず、飲酒運転が蔓延している。

北朝鮮で運転手をしていた経験のある脱北者は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に次のように証言している。

「酒を飲んで運転する人がほとんどです。軍隊にいるときには自分も酒を飲んで運転していました。泥酔するほどではなく、2〜3杯ほど引っ掛けて運転するのは当たり前のことでした」

娯楽の極めて乏しい北朝鮮で、飲酒は数少ない楽しみの一つだ。また、飲酒運転の取り締まりは行われているものの、さほど厳しくないようで、飲酒運転、そして事故を起こしたらワイロでもみ消すことが当たり前のように行われている。処罰を受けるのは、深刻な事故を起こした場合に限られるようだ。

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北朝鮮の国防省で補給を担当する部署の後方総局の幹部に仕える運転手が、飲酒運転でひき逃げ死亡事故を起こし逮捕されたと、黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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この運転手は今月18日の夜、海州(ヘジュ)市内で酒を飲んだ後で車を運転し、電柱に衝突する事故を起こした。詳細は不明だが、50代の人が事故に巻き込まれた。ところが、運転手は、車から火の手が上がったのを見て、慌てて逃げてしまった。巻き込まれた人は死亡した。

実はこの運転手、後方総局の幹部の妻から「海州から商売道具の漁具を運んで欲しい」と頼まれ、出張証明書と哨所(検問所)を通過する際に必要な移動証を渡され、現地に着いた後に事故を起こしたのだった。

市内の知人宅に逃げ込み、幹部とその妻に電話して「事故を起こした、どうか助けてくれ」と頼み込んだという。妻は「運転手が、国防省が必要とする物品を取りに行く公的な出張で、平壌から海州に向かい、運んで戻る最中に事故を起こした」ということにして、口裏合わせをした。

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また、事故の解決に必要な書類を、夫の知らないところで発行してもらい、運転手に渡した。詳細について情報筋は言及していないが、事件のもみ消しに必要な何らかの書類だろう。

ところが、事はそううまくいかなかった。後方総局の保衛部(秘密警察)がこれを不審に思い、捜査を行ったところ、幹部の妻が私的な用事で運転手を海州に派遣したことがバレてしまったのだ。

捜査は依然続いているが、運転手には法的処罰が下され、幹部は「家庭革命化」で追及を受けるものと見られている。この家庭革命化とは、妻が夫の権力を利用して悪事を働く、子どもが問題を起こす、夫婦喧嘩を頻繁に起こすなど、「家族に対する躾」がなっていない状態のことを指す。

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(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

事件を受けて後方総局は、「妻の躾をちゃんとやれ」という趣旨の通達を各部署に下した。そのせいで今回の事件が知られるようになり、幹部の間では「わがままな妻たちが夫の足手まといになっている」などとする声が上がったという。

妻や子どもを夫の所有物のように扱う家父長制の典型のような話だ。市場経済化の進展に伴い、女性が一家を経済的に支えている庶民とは全く違う世界に、幹部とその家族は生きているのだろう。

(参考記事:「強くなった女性たち」を体制への脅威と見なし始めた北朝鮮

事故に巻き込まれて亡くなった被害者の家族だが、補償金を要求しているとのことだ。