しばらく静かだった金正恩政権の動向が、にわかに活発さを増してきた。妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は25日、日本に向け対話のための「政治的決断」を促す談話を発表したかと思えば、娘の「後継者説」に力を与える表現が国営メディアで使われてもいる。
英デイリーメールは先月23日、韓国発の情報に基づき、北朝鮮の金正恩総書記には長男がいるが「青白く痩せている」ために大衆から隠されていると報じた。それによると、「ふくよかで栄養状態が良く見える金正恩やジュエとは違い、息子は青白くてやせている」うえに、「息子は曽祖父の故金日成(キム・イルソン)主席と全く似ていないと伝えられている」という。
北朝鮮の最高指導者や後継者像が論じられるとき、その容貌はかなりにはけっこうな比重が置かれる。そして名前が「ジュエ」とされる娘が父親とよく似ていることは、その傾向に拍車をかけているようだ。
そんな様子を見ていると、思い出される事件がある。
韓国紙・東亜日報記者で、脱北者出身のチュ・ソンハ氏が自身のYouTubeチャンネルで、北朝鮮の金正恩総書記が、同国の高名な美容整形外科医2人を処刑させたとの脱北者証言を紹介している。この出来事を巡っては平壌でも、ある種の「噂」が囁かれていたという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面証言したチャン・ヒョク氏によれば、医師らが銃殺されたのは2018年のことだ。当時、住んでいた地域の人民班(町内会)から回覧板のような形で、「医師の〇〇〇、〇〇〇らから被害を受けた者は申告せよ」との指示が回ってきた。チャン氏はそれを見て、「彼らの『罪状』を束ねて、処刑の口実にするのだな」と察知した。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
同氏によれば、そうして告発された医師は5人で、うち2人が銃殺となり、ほかの3人は教化所(刑務所)か管理所(政治犯収容所)に送られたもようだという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面気になるのは、金正恩氏が医師らを銃殺させた理由だ。当時、平壌市民の間では「王族の手術に失敗したのではないか」との噂が囁かれたという。
「王族」とはほかでもない、金正恩ファミリーのことだ。もっとも、これは庶民による推測のようで、確かな情報が根拠としてあったわけではないようだ。
実は当時、北朝鮮当局は美容整形を「資本主義の影響」と見て、問題視していたフシがある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の同年11月の報道によれば、それまでは平壌の一部の女性の間で流行していた美容整形が、しだいに全国に拡散。当局は「腐って病んだ資本主義の退廃的な文化を持ち込み、わが国の社会を蝕む行為」だと非難し、厳しい取り締まりを予告していたという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、過去には「金正恩が後継者に内定してから公式の場に登場するまで、計6回の整形手術をした」という主張が提起されたことがあった。
韓国の河泰慶(ハ・テギョン)「開かれた北韓放送」代表は2011年6月27日、英ロンドンで王立統合軍防衛安保問題研究所(RUSI)が主催した懇談会でこのように主張した。河氏は現在、韓国の与党・国民の力に所属する国会議員であり、国会情報委員などを歴任している。
河氏は当時、脱北者情報に基づいて、「北朝鮮は内部で07年初めに金正恩を後継者に内定し、金正恩が昨年9月に公式登場するまでの3年間余りの間、計6回の大小の整形手術を受けた」と主張した。金日成氏の容貌に似せるためだったという。
また、朝日新聞は2010年10月4日、韓国メディアの報道を引用し「正恩(ジョンウン)氏が整形手術をして祖父の故金日成(キム・イルソン)主席らに似させたのではないか」という北朝鮮住民の声を伝えている。同紙はまた、「写真や映像で公開された正恩氏とみられる人物をめぐっては、スイス留学当時とされる写真と比べ、顔が似ておらず、体形も違うとして韓国メディアで話題になっている」とも伝えた。